《水と生きる》ダムツーリズム 「聖地」を積極発信 

上毛新聞
2017年8月11日

ㅤ「高さは158メートル。岩や土砂を積み上げて造るロックフィルダムという型式です。水道、工業、農業の各用水をダムから放流する利水放流設備が内部にあります」。年間を通じて室温10度というコンクリートに囲まれた点検用通路。スタッフが説明を始めると、ヘルメットをかぶった参加者たちは興味深そうに聞き入った。
ㅤ7月下旬、みなかみ町藤原の住民らによる利根川源流まつりの一環で、奈良俣ダムで開かれた一般向け内部見学会。水資源機構沼田総合管理所が、5月の点検放流時と合わせ年2回しか実施しないとあって、多くの家族連れらが訪れた。全国のダムを巡っているという高崎市の半沢大樹さん(31)は妻の妙子さん(41)と参加。「人間の暮らしを支えるダムの裏側を見られる貴重な機会で楽しみにしていた。来てよかった」と満足した様子で話した。
ㅤダムが47基ある本県はファンの間で「聖地」と呼ばれる。中でも藤原地区は奈良俣をはじめ、重力式の藤原、アーチ式の矢木沢と特徴的な型式のダムが一日で見られる希少なエリアとされる。
ㅤこの恵まれた環境を生かして、地元では活性化を目指す動きが始まっている。管理所の協力で、地域のダム好きがガイド役を務めるダム見学会を企画。町内宿泊者を対象に、2日間で3ダムを巡り、夜はダムから星空観察も行う内容で、昨年11月に続き、8月26、27の両日に2回目を開催する。
ㅤ7月にはガイド6人が「利根川源流ダムガイドの会」を正式に発足させた。会員で、地元有志でつくる「水源地域ビジョン実行委員会」委員長も務める林仁さん(54)は「ダムブームの波に乗り、持続的な仕組みをつくりたい」と力を込める。
ㅤ国土交通省もダムツーリズムの専用サイトを開設するなど後押し。薗原ダム(沼田市)や建設中の八ツ場ダム(長野原町)をはじめとする全国の所管ダムで、民間旅行会社と連携したツアーを行っており、地域と連携しながら活用を模索している。
ㅤ各ダムで配布しているダムカードや、周辺店舗で提供するダムカレーが呼び水となって、「ダム愛」を語る熱心なファン以外も訪れるようになるなど市場は拡大。治水、利水という本来の目的はもちろん、貴重な地域観光資源としての役割にも期待が寄せられている。

【メモ】ダムの役割に理解を深めながら、施設そのものや周辺環境の景観を楽しめるのがダムツーリズム。国交省の専用サイトによると、2013年に企画されたツアーは30ほどだったが、16年は少なくとも80に増加しており、人気の高まりを示している。

 

※写真=奈良俣ダムの内部見学会でスタッフの説明に聞き入る参加者。普段は見学できない内部に入り役割を学べるのが魅力だ

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