《絹の国サミットin藤岡》基調講演「歴史に学ぶリーダーの資質」 作家 童門冬二さん 「忍びざるの心」大切

上毛新聞
2016年10月3日

ㅤ富岡製糸場の初代所長は尾高惇忠だが、その陰には大蔵省(現財務省)の渋沢栄一がいた。渋沢は日本で最初の銀行である第一国立銀行をつくった。頭取になった渋沢が行員に初めて示した訓示は「論語とそろばんを一致させよ」という内容。そろばん勘定だけだと人の道から外れてしまう。道徳を忘れずに仕事をしてほしいということだ。
ㅤ人間として正しく生きるために孔子が弟子に与えた言葉が「恕(じょ)」だ。相手の立場に立ってものを考えようとする優しさと思いやりを言う。これは今も通用するリーダーの資質の一つだろうと思う。
ㅤ徳川慶喜に仕えた渋沢は1867(慶応3)年、パリ万国博覧会に幕府が派遣する役人のまとめ役として同行した。銀行が市民の拠金を運用している実態を知り、フランスでいかに金融が大切にされているかを知った。
ㅤ帰国した渋沢は、開国後の日本の輸出品の売れ筋を調べ、生糸と茶が目玉商品になることに気付く。生糸と茶の増産と、銀行設立の抱負を持ち、慶喜がいた静岡に戻った。
ㅤ静岡で渋沢は「失業」した旗本らを救うために商法会所を立ち上げ、人々の拠金で興した事業の利益を配当する仕組みを作った。ここで製品としたのが茶で、私は静岡茶の発祥は渋沢にあったと思っている。
ㅤその後、渋沢は富岡製糸場を造る。官営で見本を示し、軌道に乗った後に民営に移すという、日本の明治の産業振興のパターンの模範とした。
ㅤ孔子の「恕」の精神をさらに広めたのは孟子で、人の悲しみや苦しみを見て何とかしてあげたいと思う本能的な衝動を意味する「忍びざるの心」を唱えた。渋沢はこれらを非常に大切にした。
ㅤ単なるモノの生産ではなく、作り手が他人に対する思いやりや「忍びざるの心」を持っていくというヒューマニズムが今も生きていると思う。高山社跡や富岡製糸場も、日本人が古くから保ってきた温かい心が脈々と流れている誇るべき遺産だ。

ㅤどうもん・ふゆじ 1927年、東京都生まれ。都職員として知事秘書や政策室長を歴任。79年に退職して作家活動に専念。著書に「小説上杉鷹山」「異説新撰組」など。99年勲三等瑞宝章受章。

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