《北毛発 温泉百景》谷川 眺望売りの宿 季節ごとに「宝」堪能

上毛新聞
2016年2月4日

谷川連峰を望む谷川温泉(みなかみ町)で最も奥に位置する「檜(ひのき)の宿 水上山荘」。晴れた日には全ての部屋から谷川岳を見ることができる眺望が自慢だ。「今冬はやはり雪が少ない。例年なら今ごろ岩肌は見えないですよ」と社長の松本英也さん(83)。ラウンジの大きな窓で切り取られた風景は、年や季節によりさまざまな表情を見せる「何物にも代えがたい宝」だ。
都内でサラリーマンをしていた松本さんが、実家の旅館に戻ったのは1980年。湧出量が豊富で加温や循環を一切行わない源泉掛け流しの湯が売りだが、施設は老朽化し建て替えの必要に迫られていた。大型投資にちゅうちょしたものの「この日本一の景色があればやっていける」と建物を新築した。
最後に着手したラウンジは当初、谷川岳に面した北側に加え東西側もガラス張りにする予定だった。しかし知己のデザイナーに「かえって印象が散漫になる」とアドバイスを受け、はたと気が付いたという。「谷川岳だけを切り取れば一幅の絵のようになる。周辺の風景をあれもこれも入れて、と欲張ってしまった。素人の浅ましさを思い知らされた」と述懐する。
眼下の桜は平野部から1カ月ほど遅れて咲き、谷川岳の残雪との対比が見事になる。雪解けが進むと岩肌と新緑とのコントラストが映える。
クラシック音楽を愛し、自身でバイオリンを披露することもある松本さん。グランドピアノが置かれたラウンジで、演奏家を招いてコンサートを開く。「生演奏を聴きながら谷川岳を眺める気分は最高ですよ」

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