空き家 ギャラリーに 駅前に発表の場 1日から広告展

上毛新聞
2019年9月30日

 空き家となっていた太田市台之郷町の東武韮川駅前の米穀・肥料店の店舗や倉庫が、ギャラリー「太田アートガーデン」として生まれ変わった。手掛けたのは、かつてそこで生活し、大手広告代理店で数々の企業広告を担当した中村政久さん(68)=同市。駅前にありながら活用されなかった建物を広告や芸術作品の発表の場に再生し、地域の活力や景観向上につなげたいと奮起した。1日から自身が担当したラジオ局の広告ポスター展を開き、お披露目する。

 中村さんは太田高―東京芸術大卒。デザインを学び電通に入社した。トヨタやサントリー、資生堂など大手企業の広告を多く送り出した。同大で非常勤講師も務めた。

 5年前に同市に戻り、ギャラリー開設に向けた準備を進めた。敷地は約1650平方メートル。10年ほど前から使われなくなった木造店舗をはじめ、母屋や米蔵3棟を、構造を生かして再生した。設計は慶応大の建築関係の研究室に依頼。同大の学生が3年にわたり改修に協力した。

 韮川駅と道向かいの旧店舗スペースは中村さんがいるときは無料開放する。テーブルや椅子を配置し、壁には絵を飾り、広告やデザインなどの本も自由に読める。店で使っていた木製の台を利用し、電車待ちの人が利用できる屋根付きのベンチも設置した。

 米蔵3棟は展示スペースとして活用する。木組みの構造を補強し、天窓を設けるなどした。1棟は建物の床材を撤去し芝生にした。自身以外の作品も展示し、創作の場として貸し出すことも検討している。廃材を活用したウッドデッキや花壇を設け、瓦を埋め込んで庭の散策路も整えた。

 中村さんが1988年の開局から約10年間携わったラジオ局「J―WAVEのポスター展」を1~20日に開催する。渋谷や新宿といった都内主要駅に掲示された10連や6連の大型ポスターなど55点を紹介する。

 中村さんは「太田で育んだ感性で取り組んだ広告を順次紹介していきたい。国内では広告媒体の展示は多くないので、都内からも興味のある人を引き込みたい」と話している。