《釣り》涼求め渓流イワナ 山形・湯殿山の梵字川 魚止めで大物逃す

茨城新聞
2025年8月11日

夏は源流釣りのシーズンだ。ところが連日の酷暑で渓流も水温が高いため、ヤマメはしばらくお休みとして7月下旬、涼を求めて山形県の湯殿山へ向かった。弘法大師の伝説が残る梵字川でイワナを狙った。

現場に着いたのは午前6時。前の週、別の源流で肋骨(ろっこつ)を痛め、早く歩けないので時間に十分ゆとりを持って臨んだ。駐車場から六十里越街道という登山道を歩き、梵字川を目指す。

今回使ったさおと仕掛け

山岳信仰の聖地である湯殿山では修験道の人と遭遇することもある。やっと川にたどり着き、ここから上流域まで川を歩く。いろいろな釣りの中で、源流釣りは最も長い距離を歩く。ウエーディング用の靴は性能が良いのはもちろん、履き慣れたもので行くのが重要だ。

ここ最近晴れ続きだったため、川は渇水状態で水温は17度と高め。ヌルヌルした藻が石に薄く付き、とても滑りやすい。登山道から近くアプローチが容易な場所でのイワナは、先客に釣られて魚影は薄い。

1時間ほど川を歩いた頃、足元から散る魚の影が大きくなってきたので、さおを伸ばすことにした。針に餌のミミズを付け、仕掛けを投げ入れると、3~4匹のイワナが奪い合うように激しく餌に群がる。アワセを入れて強引に抜き上げたイワナは25センチほどの中型サイズ。

山形県内共通の年間遊漁券

すぐさま再度狙うと、さっき群がってきた魚たちはどこかに隠れてしまったようで反応がない。渇水なのでイワナの警戒心は強く、1匹釣ったポイントで2匹目は期待できないようだ。

どんどん場所を変えていくと、力強いファイトを楽しめる中型が増えてきた。やがて魚止め滝が見えると途端に魚影が濃くなる。水流によってえぐられた滝の釜にたまっているようだ。

餌箱の中から一番太いミミズを取り出し、胴体の真ん中にチョン掛けして釜の中に投げ入れて少し待つ。「いいぞ!」大イワナが見ている時は周りの小魚はすぐ飛びつかない。警戒されないよう余計な誘いなど入れず、深い釜の中の反転流にミミズを漂わせる。

途端に水面近くに中型のイワナが数匹浮いてきた。「見切られた!」。大イワナに無視されたミミズに中型イワナが飛びかかる。それでもなかなかのサイズ。今日一番の手応えだ。何とか足元に寄せ上げたのは、黄色いヒレ先が美しい30センチだった。

だが、すぐ近くにもっと大きなやつがいたはずだ。無念…。今日は縁がなかった。写真を撮って魚をリリースし、次を狙って滝を巻いた。

その後は同サイズがもう1匹釣れたくらいで大イワナには出合えなかった。胸も痛いし、今日はこのくらいで仕方ないだろう。来た道を引き返し、お昼過ぎに駐車場に戻った。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)