《まち里歩き》裏通りにレトロな街 ▼スタート地点 西藤中央公園(太田市藤阿久町)

上毛新聞
2017年2月18日

 

東武太田駅北口に1月、太田市美術館・図書館が一部オープンした。カフェやショップを併設する施設は市民の憩いの場となっている。開発が進む駅前と古い街並みを残す本町裏通りを巡った。

初めに訪れた同市藤阿久町の西藤中央公園(➊)は、本県出身のロックバンド、back numberの楽曲「西藤公園」の舞台としてインターネットなどで話題だ。“聖地”としてファンの若者が訪れているというが、平日は近隣のお年寄りがグラウンドゴルフを楽しんでいた。週3回練習しているという西本町ひまわりクラブの部長、沢本速水さん(88)は「和気あいあい楽しむのがモットー」と笑顔だ。温かいお茶をいただき、東へ向かった。

交通量の多い表通りから裏通りに入ると、住宅街に小さな丘が見えてきた。太田西中の向かいに「八幡山古墳」の看板を発見。「こんなところに?」と疑いながら進むと鳥居があった(❷)。八幡山古墳は市指定史跡で4世紀末ごろ八幡山に造られた前方後円墳。山頂に神社がある。

石段を下り、昭和の雰囲気が残る裏通りを進む。木造アパートや立派な門構えのお屋敷を見ながら散策していると、突然煙突が現れた。工場か銭湯かと近づくと「新田パン」の文字(❸)。市民には給食でおなじみの新田パンは、1917(大正6)年の創業で今年100周年を迎えた老舗。看板商品は甘納豆入りの栄養パンと揚げパンだ。

新田パンの目の前、太田小の校庭の隅にも古い建物があった。旧太田信用組合の建物として昭和初期に建設された。現在は太田小の資料館として使われている(❹)。

近くにある大正ロマンな雰囲気の建物で女性らがフラダンスを練習していた。正面に回ると「金山図書館」と書かれている(❺)。同市出身の実業家、葉住利蔵(1866~1926年)が私財を投じて建設した私立図書館で、1922(大正11)年に開館。市指定重要文化財で、現在は太田行政センターの別館として地元のグループが活用している。

県道前橋館林線に戻り太田駅へ向かった。一部オープンしたばかりの市美術館・図書館(❻)は多くの人でにぎわっていた。雑誌コーナーのソファでくつろいでいた田中隆夫さん(79)、三枝子さん(73)夫妻=同市新田木崎町=は「駅前に美術館ができたので、久しぶりに電車に乗って来た。下車する目的ができた」と喜ぶ。7日からは同館の設計者である建築家、平田晃久さんを紹介する企画展が開催される(3月5日まで、月曜休館)。新たな施設とレトロな街並みが混在する地域の魅力が見えた。
(文化生活部 小林いず美)

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