カツ丼、カレーの名店…創業100年を前に幕 群馬・富岡市の「新洋亭」
1925年に創業した群馬県富岡市富岡の和洋レストラン「新洋亭」が30日で閉店する。市中心部に店舗を構え、3代目店主の井上邦男さん(74)、かず子さん(74)夫妻が切り盛りしてきたが、邦男さんの体調不良のため継続を断念した。夫妻は「やれるだけやった。お客さまと従業員には感謝しかない」と口をそろえる。100年近い歴史があり、カツ丼やカレーの人気が高い店が幕を下ろすことになり、ファンからは惜しむ声が上がる。
同店の初代は名古屋からコックを招き、洋食の調理法を学んだという。店舗は世界文化遺産の富岡製糸場にも近い国道254号沿いにあり、市民だけでなく、製糸場を訪れる観光客にも愛されてきた。
高校卒業と同時に店に入った邦男さんは2代目の父が亡くなってから約20年、店の看板を守ってきた。「足に大やけどを負っても厨房(ちゅうぼう)に立つ仕事熱心な人」(かず子さん)だったが、昨年の春ごろから徐々に体調を崩すようになった。今月初めに親族で話し合い、閉店を決めた。
かず子さんは店内を自作の絵はがきで飾ったり、客と積極的に会話したりして愛される店づくりをしてきた。「多くのお客さまとつながりを持てたことが何よりうれしかった」とほがらかに振り返る。
3年ほど前から訪れている山口道子さん(52)=神奈川県鎌倉市=は、味はもちろん、誰にでも気さくに接するかず子さんの人柄に魅了されたという。来店が旅行の目的になることもあり、「残念。でも、また会いに来たい」と話す。
店舗は閉店後に解体されるが、受け継がれた味を守ろうと模索する動きもある。同店でカレーなどの調理を担当する三女の純子さん(45)は、カツカレーやオムライスといった一部のメニューを提供する「小さな新洋亭」の開業を思い描く。「たくさんのファンのために味を残したい」と決心を語った。
水曜定休。営業時間は午前11時~午後3時、午後5~7時(ラストオーダーは同6時半)。
詳細はこちら