愛好家団体が写真集刊行 茨城県北・県央 営みつなぐ 6施設寄贈 暮らしや祭礼紹介

茨城新聞
2023年6月19日

茨城県北、県央地域の写真愛好家でつくる「フォト常陸」(成田富夫会長、会員12人)が写真集「いばらき 故郷の記録」(A4判、54ページ)を刊行し、写真集の基になった写真データを収めたDVDとともに県立図書館(水戸市三の丸)など県内6施設に寄贈した。写真集は県北、県央の山間、沿岸部の人々の暮らしや祭礼などを作品約160点で紹介。DVDの画像は616点に及び、誰もが自由に使える素材として無料で提供する。

写真集の刊行と写真データの無償提供は、途絶えていたり、伝承の危機に直面していたりする県北、県央地域の営みを将来に伝えるのが目的。同会の写真集としては2冊目で4月に刊行した。

写真集では同県常陸大宮市西塩子の回り舞台をテーマにした「西塩子の農村歌舞伎」や、久慈川で稚魚の放流から伝統的な漁までを記録した「鮭(さけ)の一生」、少子化で次々と廃止されていく「廃校」など、会員の力作が収められている。

月例会で和気あいあいと作品を批評し合う会員ら=東海村村松の舟石川中丸区自治集会所

副会長の会沢勝男さん(80)=同県常陸太田市=は2011年から1年間、常陸太田市天下野町で水府葉たばこを栽培する夫婦を「水府葉たばこ栽培の一年」として記録。育苗の堆肥用に落ち葉をかき集める作業から、苗床から畑への移植、葉に栄養を届けるために花を摘む「芯止め」、乾燥したタバコのしわを手で伸ばす出荷までを追った。

当初は「顔を写さないで」と念を押されていた夫婦が、会沢さんが足しげく通ううちに、打ち解けていき、最後には自宅前で柔らかな笑顔を浮かべる印象的なポートレートとして収めることができた。会沢さんは「写真もコミュニケーションもとり続けることが大切」と語った。

成田会長(83)=東海村=は「写真集は地域の貴重な記録。地域の今を知り、(写真データは)50年後、100年後まで伝えていくために広く活用してほしい」と話している。

写真集は、日立市立記念図書館(同市幸町)で閲覧でき、県立歴史館(水戸市緑町)、県立図書館、水戸市立中央図書館(同市中央)でも順次閲覧可能になる。写真データの使用に当たっては、撮影者の名前、撮影日時と場所を明記することや、ウェブへの使用は禁止している。

フォト常陸は茨城旅写真クラブとして2003年に発足し、一昨年名称を変更。水戸市在住の風景写真家、大作成一さん(75)を講師に招き、県北、県央地域の風物などをテーマに撮影し月例会を開くなどしている。