チャレンジショップ新規9店 茨城・鹿島神宮周辺、にぎわい創出 割烹店、地元食材の魅力発信

茨城新聞
2023年6月1日

空き店舗の利用促進を図り、中心市街地の活性化を図る茨城県鹿嶋市の「チャレンジショップ支援事業」で、新規開店した店舗が鹿島神宮周辺の新たなにぎわいづくりに一役買っている。2020年度の事業開始から、改修費や店舗賃借料など300万円を上限に補助を受けて9店舗が開店し、地元の食材を生かした食などを通して地域の魅力を発信している。

同市宮下の鹿島神宮駅近くに3月オープンしたカウンター和食割烹(かっぽう)の店「鹿嶋わたなべ」。地元農家の自然栽培野菜、県産や産地直送の食材を使ったコース料理とアラカルトを提供する。店内は黒を基調とした落ち着いた空間で、一枚板のカウンターが特徴の一つ。笠間焼の器や酒器などが料理と酒を引き立たせる。

同事業で9店舗目のオーナーとなった渡辺智之さん(43)は、「鹿嶋にはおいしい食材がたくさんあるので、魅力を伝えたい」と語る。

渡辺さんは東京都出身。高校3年間の大半を同市で過ごした。大学時代は建築学科で設計を専攻。卒業後は内装業の会社で、飲食店の設計施工や出店に関する知識を身に付けた。

いつしか自分の店を出したい気持ちが芽生えたという渡辺さんは、3年で退職。調理経験がなかったため、学生時代のアルバイト先の料理長が独立した店で基礎を学んだ。

その後も複数店舗で京料理や炭火焼きなどを習得。独立開業しミシュランガイド東京にビブグルマンとして掲載されたほか、シンガポールに出店も経験した。

鹿嶋の新店舗では、利き酒師でもある渡辺さんが選んだ料理に合う日本酒やワインなども豊富に用意する。渡辺さんは「ここでしか食べられない料理がある。東京から鹿嶋に来るきっかけの一つになれば」と将来の展望を描く。

事業を推進する市商工観光課の担当者は「神宮周辺に9店舗がオープンし、新たなにぎわいを創出してきた。これからも、たくさんの人が集まる活気ある店ができることを期待している」と話した。