グランピングやカフェ 茨城・常陸太田のバス会社

茨城新聞
2023年5月20日

茨城県常陸太田市に本社を置くバス会社「アール交通」(京免義典社長)がコロナ禍を機に、新事業としてグランピングや米国・カントリー調のカフェなどの施設をオープンさせた。他業種に進出することで企業全体を支えるとともに、地域住民が楽しめる場を提供することで地域活性化に結び付けたい考え。京免社長は「新施設を活用して常陸太田の良さや茨城の魅力を発信していきたい」と意気込む。

新型コロナの影響で全国のバス業界や旅行業界は大打撃を受けた。同社も例外ではなく、「これまでにない経験をした。ホワイトボードが真っ白になり、3年間続いた」と京免社長。「コロナ禍が鎮静化しても同じ事態が起こらないとは限らない。苦しい状況の中で何かできることはないかと探った結果、将来を考えて踏み切った」と新事業に乗り出した経緯を説明する。

2年前から準備を進め、別会社を立ち上げて4月に同市大里町に「GSTグランピング」をオープンさせた。施設内にはカントリー調の「ナッシュビルカフェ」をはじめ、県内では珍しい国産木製のバレルサウナ(樽(たる)型サウナ)なども設け、宿泊施設や多目的ハウスなどを整備した。

「若い人たちなどの集まる場をつくり、県外にアピールして同市への誘客を図りたい」と語る。

敷地面積は約1973平方メートルで、施設は全て木造。施設整備のスタートはスタッフの草刈りから始まった。庭のヤシの木がリゾート感を醸し出す。

カフェや宿泊施設、多目的ホールを備える「GSTグランピング」=常陸太田市大里町

カフェは米国のカントリーミュージックの町・テネシー州のナッシュビルをイメージ。アメリカングッズの飾り付けに、BGMはもちろんカントリーミュージック。ナッシュビルの名が付くハンバーガーやハンバーグなどが売りだ。

「装飾や食事、ドリンクに音楽などちょっとした異国の雰囲気を味わってほしい」とアピールする。

宿泊施設は1棟貸し切り(7~8人)で、室内に風呂にシャワー、足湯がある。庭でバーベキューが楽しめ、雰囲気のあるバレルサウナを用意した。多目的ホールは会議室やミニコンサート、ビューイングライブなどが可能だ。

小学生の時に映画「トラック野郎」を見たことでトラックに憧れた。米国映画「トランザム7000」など劇中に流れていた音楽でカントリー・ミュージックに魅了され、東京にレコードを買いに走った。

「今回のようなカフェをやってみたいという夢を長く持っていたが、異業種への参入の難しさを見てきていたので第一線を退いた時に考えよう」と思っていたという。店内ではテンガロンハットに赤いジャンパー姿で忙しく動き回る。

将来的には施設を利用して物産展や音楽を披露する場、各種イベントの場として提供し、「首都圏などからも足を運んでもらい、地元の活性化に結び付けたい」と話す。