優れた描写力、豊かな色感 深水の美人画32点 茨城・筑西の廣澤美術館

茨城新聞
2023年1月6日

近代美人画に革新をもたらした日本画家、伊東深水(1898~1972年)の特別展「伊東深水の美人画展-麗しき女性美への探求-」が、茨城県筑西市大塚の廣澤美術館で開かれている。当時の流行を鋭い感性で捉え、優れた描写力と豊かな色感で描いた深水の力作32点がそろう。12月28日に報道関係者向けの内覧会が開かれた。

美人画を中心に展示された会場では、まず作品「大川端」が目を引く。雪が舞い散る道を朱色の和傘を差して歩く着物姿の女性が描かれている。女性の頬はかすかに赤く染まり、情感あふれた表情で女性美を引き立てている。正月にちなむ作品「羽子」は、羽織姿の若い女性が羽子板を抱える光景を捉えている。着物の柄には当時流行していた文様が描かれている。世の中の風俗を巧みに作品に盛り込みながら、何げない日常の女性の姿に焦点を当て、美人画に仕上げている。

作品はいずれも、同美術館を運営する広沢グループの広沢清会長(84)のコレクションだ。

東京出身の深水は、美人画の大家として知られる鏑木清方(1878~1972年)に入門。歌川派の浮世絵の流れをくみつつ、後年はくっきりとした固い描線による抽象画風の表現を取り入れるなど、試行錯誤を繰り返した。広報担当で広沢商事(同市)の田原一哉観光部長(63)は深水について「浮世絵の伝統を踏まえつつ、その定型にはまらない絵を描こうとした」と説明した。

会期は3月26日まで。問い合わせは同美術館(電)0296(45)5601。