戦後の日本版画一堂 茨城県近代美術館 アトリエ再現も

茨城新聞
2023年1月1日

■色彩、緻密な表現 間近で
戦後から半世紀にわたる日本版画の代表作を一堂に集めた企画展「戦後日本版画の展開-照沼コレクションを中心に」が、水戸市千波町の茨城県近代美術館で開かれている。県内のコレクターから寄贈された版画を中心に、日本を代表する作家らによる約180点を展示している。版画の歴史やそれぞれの技法をひもとき、魅力に迫る。

主な出品作家は、斎藤清氏や駒井哲郎氏、浜田知明氏、棟方志功氏を含む77人。戦後の日本版画を収集してきた茨城県東海村の医師、照沼毅陽さん(2021年死去)から寄贈された作品を中心に展示している。

照沼さんは生前、数回にわたり同館に作品を寄贈してきた。同館が所蔵する版画約1900点のうち、3分の1が照沼さんのコレクションで、現代の日本版画が充実したことで、歩みを概観する今回の展覧会が実現した。

見どころは1950年代以降、海外の展覧会で一躍脚光を浴びた日本の版画家の代表作がそろう点だ。木版や銅版、素材や技法、さまざまな色彩など、多様な表現が楽しめる。刷りの工程を重ねた微妙な色彩などが魅力の清宮質文氏の作品は「早春の静物」を含む27点が出品されている。アトリエ再現コーナーには、遺品の机や道具類も展示された。

清宮質文氏「早春の静物」(1977年、県近代美術館蔵)

 

同館主任学芸員の永宮勤士さんは「カラフルさや緻密さなど、版画には筆で描く作品とは違った魅力がある。きめ細かな表現を間近で鑑賞してほしい」と話している。

会期は2023年2月5日まで。午前9時半~午後5時。月曜休館(ただし1月2日、9日は開館)。1月1日、3日、10日は休館。