《食いこ》麦と葡萄(茨城・牛久市) 世界に通じるワインを

茨城新聞
2022年11月27日

「色や酸味、甘みなど、どれを取っても全く同じブドウはない。それを同じ質のワインに仕上げていくことが面白くもあり、難しくもある」。ワインやビールを手がける醸造所「麦と葡萄」(茨城県牛久市)の代表、角井智行さん(48)は、ワイン造りの醍醐味(だいごみ)をこう表現する。

大学時代の授業がきっかけで酒造りに魅了された。自身の醸造所を立ち上げる前は、日本初の本格的なワイン醸造所「牛久シャトー」でクラフトビールを担当する傍ら、ワイン造りやブドウ栽培の技術を学んだ。

転機が訪れたのは2018年末。勤めていた会社が牛久シャトーの飲食部門を撤退することになった。角井さんは「どうしてもワインやビールの醸造がしたい」と悩んだ末に退職。妻の章子さん(53)の後押しもあり、19年7月に起業し、翌年4月から醸造に乗り出した。

角井さんの新酒ワインの仕込みは、8月末から始まる。茨城県常陸太田市やつくば市から仕入れたブドウを皮ごと発酵させてから搾り、さらに発酵を続ける。その後、低温で約1カ月間じっくりと貯蔵してから瓶詰めする。11月中旬から白とロゼ、12月頭から赤というように、飲み頃を迎えたワインが順次発売される。

県産ブドウを100%使用したワイン

 

さまざまな工程の中でも特に重要なのが、ブドウの成熟度合いを見極めることだ。種をかんだ時の自身の感覚と、渋みや甘みを数値測定した結果を合わせ、総合的に判断する。そうすることで、おいしく、質の良いワインが出来上がるという。

「ブドウの出来がワインの出来を左右する」と語り、醸造だけでなく、ブドウの自家栽培にも取り組む。牛久市女化町にある60アールほどの畑で、起業とともに木を植え、大事に育ててきた。ブドウは収穫できるようになるまで、約3年かかるため、今年待望の初収穫を迎えた。採れたブドウは熟成期間を経て、来年以降、自社ワインとして店頭などに並ぶ。

「いずれは牛久から世界に通じるワインを造りたい」。ライフワークとも呼べる酒造りに没頭できる喜びをかみしめ、さらなる高みを目指している。

 ■お出かけ情報
麦と葡萄
▽茨城県牛久市牛久町531の3
▽醸造所直営店の営業時間は金曜午後3~7時、土日祝午後1~7時。
▽生ワイン、生ビールの量り売りも実施。
▽(電)090(9801)9195