《三碑の里訪ねて(1)》七輿山古墳 羊太夫の伝説残る 巨木が包む憩いの地

上毛新聞
2016年10月20日

ㅤ国連教育科学文化機関(ユネスコ)「世界の記憶」登録を目指す「上野三碑」。三碑のある高崎市南部と周辺地域は古代、技術を持った渡来人が暮らす“先進地”として栄えた。歴史を感じさせる名所、旧跡が点在する三碑の里を歩く。
ㅤ樹齢数百年の巨木群から四方に枝が伸び、墳丘そのものが生き物のような独特の存在感を放つ。藤岡市上落合にある国史跡の七輿山古墳。上野三碑の多胡碑に刻まれた「羊」とされる多胡郡司、羊太夫にまつわる伝説が残る地だ。
ㅤ七輿山は高さ16メートル、全長145メートルの前方後円墳で、6世紀に築造された古墳としては東日本最大級となるという。大型の埴輪(はにわ)が出土し、天皇陵に似た形状であることから葬られている人物はヤマト政権に近い有力者と推測されるが、いまだ謎となっている。
ㅤ古墳の名称や地名は羊太夫に由来する。伝説では、朝廷から謀反の疑いをかけられ、羊太夫は死亡。逃げた妻や従者など7人は自害し輿に入れて葬った場所が七輿山で、7人が落ち合ったため「落合」という地名になったともいわれている。
ㅤ年間を通じて歴史ファンや散策する市民が訪れる七輿山のもう一つの顔が、サラリーマンの憩いの場だ。古墳の東にある「ドライブイン七輿」は藤岡の隠れた観光スポットとして知られる。40年以上稼働するレトロな自動販売機が並び、手作りのラーメンやトーストサンドが味わえる。平日はシートを倒した車中で昼寝する会社員の姿が見られ、ゆったりとした空気が漂う。土日には県外から観光客が集まる。
ㅤドライブインを経営する木村清さん(69)は「春はサクラで古墳はピンクに染まる。三碑とともにぜひゆっくりと遊びに来てほしい」と誘う。

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