恩田さん「嫁に出す気分」 音楽劇「夜のピクニック」開演

茨城新聞
2016年9月18日

県立水戸一高の伝統行事「歩く会」を題材にした音楽劇「夜のピクニック」(茨城新聞社特別協力)の公演が17日、水戸市五軒町1丁目の水戸芸術館ACM劇場で開幕した。本番直前の通し稽古には、物語の原作者で同校出身の小説家、恩田陸さんが姿を見せ、劇を鑑賞。「水戸にいたから書けた作品。舞台化はお嫁に出す気分です。挿入歌や演出も素晴らしく、歩くことは生きることそのものと感じた」と笑顔で話した。

音楽劇「夜のピクニック」は、恩田さんが高校時代の体験を基に2004年に執筆した同名の小説を、同館演劇部門芸術監督の高橋知伽江さんが脚本として書き下ろした。

原作の魅力はスケール感あふれる構想にある。1000人を超える高校生たちが「鍛錬歩行祭」と称して80キロの道のりを夜通し歩き通す。疲労が頂点に達した時の心情、絆、淡い恋心がみずみずしくつづられている。第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞の受賞などベストセラーとなった。

恩田さんは1964年、宮城県生まれ。父親の仕事の関係で中学3年から高校卒業までを水戸で過ごし、80~82年に実際の「歩く会」を体験した。

「当時は女子が少なく、男子校のような雰囲気。夜歩き続けると疲労で無口になり、誰もが幽霊のようになっていた」と恩田さん。「ただ、極限状態を共有することで一体感が生まれる。肉体的につらい行事をいつか小説にしたいとその時に感じた」と振り返る。

深く刻まれた記憶を基にした作品が音楽劇として生まれ変わり、水戸の劇場で上演されることになった。「劇場全体の空間を生かした団体歩行の演出や俳優による挿入歌が素晴らしい。歩くことは人生の代名詞だと改めて感じた」

さらに、舞台を見に来る観客には「自分は原作者。この音楽劇は水戸の皆さんのもの。多くのお客さまに育てていただければ」と笑顔で語った。

音楽劇「夜のピクニック」は25日まで上演。問い合わせは同館チケット予約センター(電)029(225)3555。 

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