幽玄美の極致「松風」 下平さん、高崎で27日演能 野村萬斎さん狂言も
ㅤ高崎市出身の観世流能楽師、下平克宏さんの第11回演能の会高崎公演が27日、高崎市文化会館で開かれる。今回の演目は、能の最高傑作の一つに数えられる「松風(まつかぜ)」。田楽の曲だった「汐汲(しおくみ)」を元に観阿弥、世阿弥が改作したと伝えられる。「熊野(ゆや)、松風に米の飯」といわれるほど、何度見ても飽きないと古くから人々に愛されてきた人気曲。下平さんは「能の魅力を心ゆくまで堪能できる演目。ぜひ多くの方に鑑賞していただきたい」と話している。
ㅤ旅の僧が須磨の浦にやってくると、浜辺にある一本の松に、札が打たれ短冊がかけられている。里人に「いわれ」を尋ねると、昔、在原行平(ありわらのゆきひら)が寵愛(ちょうあい)した二人の海人(あま)の古跡という。僧が経を読み念仏を唱えるうちに夕暮れとなる。そこに二人の汐汲女(しおくみおんな)が現れ、寵愛された松風、村雨の姉妹の亡霊であることを明かす。都に帰って亡くなった行平への思いを語り、形見の狩衣(かりぎぬ)をまとい、恋慕の舞を見せるが、夜明けとともに姿を消し、松を吹く風だけが残るというあらすじ。
ㅤシテの松風を下平さん、ツレの村雨を大槻崇充さん、ワキの旅僧を殿田謙吉さん(下掛宝生流)が務める。月明かりに洗われた純粋無垢(むく)な汐汲女の姿が幻として描かれる幽玄美の極致ともいえる曲で、詞章と節付けの美しさでも知られる。
ㅤ公演では野村萬斎さんの狂言「因幡堂」も行われる。大酒飲みの妻に離縁状を送り付けた夫が、新妻を得るために願掛けにやってきた因幡堂で、夢に現れた薬師のお告げに従って女が待つ場所へ行くと―。
ㅤ当日は午後6時半開演。前橋市歴史文化遺産活用担当参事の手島仁さんが解説。藤波重彦さんの仕舞「船橋」、川原恵三さんの独吟「井筒」もある。
ㅤ公演に先立つ14日午後6時半から高崎シティギャラリーでオープニングレクチャー(無料)も開かれる。能「松風」の詞章を下平さんと共に読み、謡い、本公演への理解を深める。入場料(全席指定)はA席5800円、B席3800円。申し込み・問い合わせは、演能の会事務局(電話027・322・5753)へ。
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