神栖で北米の海鳥確認 温暖化で分布拡大か 東アジア初、愛鳥家も驚き
北米に生息する海鳥アメリカコアジサシの渡来が、国内、東アジアで初めて神栖市の須田浜海岸で確認されたことを受け、調査、発見した山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の茂田良光研究員は、茨城新聞社の取材にあらためて見解を示し「温暖化など気候が影響し、分布が広がっている可能性がある。これまでも繁殖などの広がりが確認されている例もあり、今回のものがたまたま迷って来たものとは考えにくい」と考察した。
■8934キロ渡る
同研究所によると、2014年7月18日、同海岸でコアジサシの標識調査を実施中、アメリカコアジサシ2羽を捕獲した。1羽は日本以外の国の標識調査の金属足環とカラーリング(色足環)が装着されていた。
その後、足環の照会など調査を続けた結果、この個体が12年7月5日にアメリカのノース・ダコタ州マクリーン郡でヒナの時に捕獲され、足環を着けて放鳥された個体であることが分かり、今年3月1日に同研究所が発表した。放鳥地から回収地までの距離は、直線距離で8934キロに及ぶ。
■標識調査の有効性
アメリカコアジサシは、チドリ目カモメ科の海鳥で全長約23センチ。日本に夏季に渡来して繁殖するコアジサシに近縁で北米と西インド諸島の砂浜海岸や干潟、内陸の河川で繁殖し、中南米やハワイなどに渡って冬を越す小型の水鳥。鳴き声は異なるが、コアジサシに酷似することから野外観察で本種の渡来に気付くことは難しいと考えられ今回、鳥類標識調査の有効性も示された。
茂田研究員によると、これまでもハワイやミッドウェーで繁殖例があった。分布は近年広がっており、大西洋を横断してイギリスでの繁殖も見られるという。茂田研究員は「越冬地に向かう中継地点として日本に立ち寄ったのではないか。今後は日本だけでなく、台湾あたりでも確認される可能性が出てくるのでは」と話す。
■定期的に渡来か
今回、東アジアで初めてアメリカコアジサシが確認された神栖市は、愛鳥家の間ではよく知られる“海鳥の楽園”。今回の調査にも茂田研究員と同行し、地元での海鳥の調査を長年続ける波崎愛鳥会の徳元茂事務局長は「波崎や銚子周辺の海は黒潮と親潮がぶつかり海鳥の餌となる魚の稚魚が多いうえ、地形も突き出ているため海鳥が来やすい。人間の手が入らない長い砂浜があることも大きい。珍鳥が相当来ている」と話しながらも「(アメリカコアジサシを)神栖で初めて確認したことは本当にすごい」と驚きを見せる。
茂田研究員は「アメリカコアジサシは定期的に日本に渡来している可能性もあり、今後も継続して調査し、注意して見守っていきたい」と話す。
★鳥類標識調査
かすみ網などを使って鳥類を捕獲し、個体識別用の足環を装着して放鳥するもので、鳥類の渡りや寿命などのさまざまな生態を明らかにする目的で実施されている。近年では鳥類生息状況のモニタリングのためにも活用されている。日本では現在、環境省の委託事業として山階鳥類研究所が多くのボランティアの協力も得て実施。1961年以来、足環を装着して放鳥した500万羽以上のデータが蓄積されている。
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