《まち里歩き 探検隊》八王子丘陵、冬のどか

上毛新聞
2018年12月28日

太田、桐生の両市にまたがる八王子丘陵。その南麓にはのどかな農村地帯が広がり、ゆったりとした時間が流れる。12月というのに取材日の予想最高気温は20度超。季節外れのぽかぽか陽気に包まれながら、山里をのんびりと歩いた。
徒歩でも入場できる北関東道・太田強戸パーキングエリア(PA)で水分を補給し出発(❶)。

一般道を北へ向かった前方には八王子丘陵の山々がなだらかに連なる。田んぼと民家が点在する農村地帯をしばらく歩くと、公園の奥に神社が見えた。入り口の石柱には「駒形神社埴輪窯跡」と刻まれ(❷)、説明板によると6世紀末ごろの窯跡で円筒や形象埴輪(はにわ)が出土し、1979年に市史跡に指定されたという。説明板に添えられた地図を参考に窯跡を探したが、確認することはできなかった。


さらに北に進むと道はだんだん細くなり、峠道の入り口手前で「強戸窯」の看板を見つけた。敷地の奥には四つの火袋が連なる登り窯。太田に窯があったことに驚き、感動した。沖縄で10年修業した島村憲市さん(41)と、妻の和美さん(40)が2年半ほど前に構えた工房だった(❸)。ここで日用雑器を製作する憲市さんは「使いやすくて頼もしい、日常のための器を作っています」と話してくれた。


近くにある北金井キャンプ場には、かまぼこ形のユニークな銀色の建物があった(❹)。太田市教委によると、米進駐軍が使っていたもので、キャンプ場ではかつてバンガロー代わりに使っていたという。


ここからは菅塩沼へ続く山道。落ち葉を踏みしめ、小鳥のさえずりに耳を澄ませながらゆっくりと歩く。上りの勾配はさほどきつくはないが、運動不足の身にはこたえる。峠を越えて菅塩沼に近づいた辺りに、かがみこんでいる男性がいた。キノコ狩りだろうか。声を掛けると、クロスジフユエダシャクというガの写真を撮っているのだという。
林を抜けると菅塩沼に到着。すぐ近くにはミカン畑が広がり、たわわな実をつけていた(❺)。

沼から見る丘陵はまだほんのり赤く色づいていたが、さすがに紅葉のピークは過ぎた様子(❻)。冬本番はすぐそこと告げているようだった。

【ちょっと一息】市外の夜景も一望 丘の上のウエディング&レストラン八王子農園(太田市菅塩町)
小高い丘の上にあるおしゃれな店。太田の市街地から浅間山まで一望でき、夜は太田だけでなく前橋や高崎などの夜景も楽しみながら食事ができる。結婚式を挙げるカップルも多い。


ランチ、ディナーともにセットメニューは1080円からで、ピザやステーキ、海鮮などがある。田部井好明オーナーのお薦めはステーキが付くセット。昼夜ともに3千円から味わえる。
園内には雨天対応で一年中利用できるバーベキューガーデンがあり、果樹園やドッグランも。愛犬と一緒に食事ができるドッグハウスも備える。
午前11時~午後10時。無休。問い合わせは同園(☎0276・37・0300)へ。

【メモ】平たんな道から低い峠を越える3.5キロのルート。太田強戸PA南の県道は交通量がやや多いが、そこから北側は日中ほとんど車が通らない。自然を満喫しながら歩くことができる。

【本日の探検隊員】太田支局 藤井陸大記者 四季それぞれに魅力
八王子丘陵とその周辺は、冬のイルミネーション(八王子山公園)や春のサクラ(菅塩沼)など四季折々に魅力がある。今回のルート近くには石切り場や旧中島飛行機の地下工場跡といった“歴史遺産”も点在し、趣味趣向に合わせていろんな楽しみ方ができる。強戸窯は駆け足での見学だったので、今度はゆっくり訪ねてみたい。