桜、紅葉、鮮やかに 偕楽園「好文亭」、ふすま絵修復
水戸市の偕楽園にある「好文亭」のふすま絵6枚12面が10日、修復作業を終えて好文亭に納められた。修復作業を担った同市五軒町の工房「泰清堂」の表具師、寺門泰三さん(58)は初めての作業を振り返り「手探りで産みの苦しみがあった。やっとノウハウをつかめてきて、同様の方向性で進めていけると思う。これからがスタート」と話した。
桜やツツジ、紅葉が描かれたふすま絵が、より鮮やかになって帰ってきた。桜の間と躑躅(つつじ)の間を区切る4枚と、紅葉の間と入側の間を区切る2枚。緩衝材をほどき、慎重にはめ込まれた。1950~60年代に制作されたふすま絵全96面の修復事業の1回目として、7月から約3カ月かけ計11工程の作業が行われていた。
絵が描かれている本紙は、にかわの水溶液を塗り顔料が剥がれ落ちるのを防ぐ剥落止めや、汚れを落とすクリーニングなどが施された。粉状だったり、乾いた大地のように大きく割れていたりと箇所によって細かく顔料の状態が違っていた。剥落止めは、それぞれに合ったにかわの量や種類を見極める必要があり、もっとも重要で時間のかかる作業だったという。
調査・監理をする東京芸大大学院保存修復日本画研究室の非常勤講師、久下有貴さん(32)が、ライトを当て、顔料が定着しているかなど最終確認を行った。「修復が続く1年半の変化を見て、長年持たせられるよう検討を重ねたい」と話した。
目には見えない本紙の裏側も、約13層の紙の張り替えや下地骨の新調などが行われた。下張りとして12面全てに、ワークショップなどを通じ、市民が絵や書を記した和紙計84枚が使われている。
修復は、2018年度まで3カ年計画で行われる。本年度は、残る2回で計16面、来年度は計68面が予定され、2回目の作業として桜の間と萩の間を区切る4枚8面が運び出された。
愛媛県から夫婦で訪れた新居邦造さん(63)は、まだ修復されていないふすま絵と見比べ、「色がクリアになった。紙を変えずにここまでできるなんて大変な作業だったと思う。見れて良かった」と話した。
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