先駆者モリスや歴史紹介 「アーツ・アンド・クラフツ」展 壁紙や家具など170点 茨城県近代美術館 水戸

茨城新聞
2025年5月22日

19世紀後半の英国で起こったデザイン運動「アーツ・アンド・クラフツ」に焦点を当てた展覧会が、茨城県水戸市千波町の県近代美術館で開かれている。運動の先駆けとなったデザイナー、ウィリアム・モリス(1834~96年)と、その影響を受けた芸術家らが手がけた壁紙、テキスタイル、家具など多彩な作品が会場に並ぶ。今も根強い人気を誇る美しいデザインとその歴史が紹介されている。

同運動は欧州で産業革命による工業化が進む中、職人の手仕事に立ち返り、生活と美術の統合を目指した。世界的にも広がり、米国では帝国ホテル旧本館を設計したことでも知られる建築家、フランク・ロイド・ライト(1867~1959年)も参加し、新たな境地を切り開いた。

同展では英国と米国の作品約170点から、アーツ・アンド・クラフツの実用性と美を兼ね備えたデザインに迫る。イチゴをついばむツグミから着想を得たモリスの代表作「いちご泥棒」、ライトが設計したステンドグラスなどが見どころ。このほか、ネックレスなどの宝飾品、書籍なども並び、同運動が生活に関する幅広い領域で展開、発展した様子が分かりやすく紹介されている。

同館の山口和子首席学芸員は「アーツ・アンド・クラフツのデザインは現代も人気だが、歴史やモリスについてはあまり知られていない。展覧会を通して改めて目を向けてほしい」と話している。

同展は6月29日まで。月曜休館。