「桂雛」動画で紹介 デジタル活用、無人展示会 作家とオンライン通話も 茨城・つくば
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茨城県伝統工芸品のひな人形「桂雛(かつらびな)」の無人展示会が、同県つくば市吾妻の交流拠点施設「コーエン」内で開かれている。掲示されたQRコードを読み取ると人形の説明動画が見られるほか、人形作家とオンライン通話することも可能だ。人手不足の工芸業界で、デジタルを活用した無人店舗化を念頭に、伝統工芸の新たな展開を模索する。展示は3月5日まで。
仕掛け人である桂雛(同県城里町)の小佐畑孝雄社長(52)は「伝統工芸はデジタルとの相性が良く、業界特有の弱点を補ってくれるのでは」と見ている。無人展示会は同社初の試みで、県産業技術イノベーションセンターも協力した。
施設内の通路にある壁面スペースを活用した。今回は男びなと女びな8組と女びな2体のほか、着物と同じ素材や縫製技法を用いた壁飾りを展示している。結城紬(つむぎ)やシルクで仕立てた、上品で洗練された人形がずらりと並ぶ。
説明書きにあるQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、展示ごとに1~4分ほどの動画が見られる。製作の様子や生地の種類、「匂い」と呼ばれる着物のグラデーションの説明などが分かりやすくまとめられている。
通信アプリLINE(ライン)の通話機能を使い、人形作家でもある小佐畑社長に詳しい説明を聞くこともできる(28日を除き午前10時~午後4時)。
無人で行う背景には、工芸業界の人手不足がある。工芸業者は家族経営も多く、小佐畑社長は「自分たちで製作から営業、販売まで行う効率性の低さが弱点」と指摘する。
商材の季節性が強いため、繁忙期に遠方まで営業に行けない苦労があるという。「動画が販売員や営業の役割を果たしてくれる」と強調する。
今回は今後都内で開催予定のポップアップに向けて、アクセス解析を試験的に行う。2027年度の無人店舗展開を目指し、価格帯やリース需要など地域ごとのニーズを探る。小佐畑社長は「(伝統工芸を)新しい形にブラッシュアップしていきたい」と意気込む。
午前7時半~午後11時(最終日は午前のみ)