観光誘客 タイに照準 茨城県、高い再訪率重視

茨城新聞
2023年8月25日

インバウンド(訪日客)拡大へ茨城県がタイに照準を合わせている。昨年12月に大井川和彦知事が現地でトップセールスを行うと、その後も観光セミナーやファムトリップ(視察旅行)を相次いで実施。日本への関心とともにリピート(再訪)率が高いタイからの観光客を獲得しようと、他県との競争が激しさを増す。茨城県が差別化できるとする「体験観光」の魅力をいかに伝えられるかが誘客拡大の鍵となる。

■ツアーを企画

茨城県を巡る視察旅行が7月31日から4日間の日程で行われ、行く先々で質問が相次いだ。

「海外の団体客は来ていますか」「デザートはいくらですか」「(土産品の)試食はできますか」

県が招いたのは、タイ旅行業協会と現地旅行業者の計10社。県内の観光地や宿泊施設など計18カ所を紹介し、ツアー商品の造成を促した。

タイの関係者らは茨城県の観光施設や土産品の特徴や価格などを尋ねながら、顧客ニーズと合致するか確かめた。同協会のアネーク・シーチーワチャート名誉顧問は「茨城の魅力を知ることができた。帰国後、観光客や旅行業者に伝えていきたい」と話した。

サツマイモなど体験型農業テーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」(行方市)の担当者は「海外に施設の魅力を発信する好機」と歓迎。県は「視察旅行に参加した数社がツアー商品の作成に着手した」と成果を強調した。

■県内宿泊促す

タイでの日本観光への関心は高い。政府観光局の統計では、2019年のタイからの訪日客は131万8千人。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、5回以上来日した人は3割を超える。

政府が訪日観光客の受け入れを再開した昨年7月、いち早く来県した国外団体客もタイからだった。こうした傾向に、県は「大いに需要がある」と判断。積極的に売り込みを図る台湾とともに、タイを重点市場に位置付けた。

昨年12月、タイを訪れた大井川知事は、旅行業協会の幹部に茨城県の観光と食を直接PR。今年7月にはバンコクで観光セミナーを初めて開き、旅行会社約80社に首都圏から近い立地の優位性をアピールした。

県は9月にも「バンコク日本博」に出展し、秋の観光シーズンに向けた誘客に攻勢をかける。訪日客を茨城県にとどめることで観光消費額を伸ばすため、現地の旅行会社には、県内で宿泊する観光プランの造成を促し、25年の外国人宿泊客数26万人の達成を目指す。

■訴え粘り強く

茨城県観光を巡っては、県とタイ側の思惑の違いも見える。

茨城県は日光や伊豆といった競合する近隣観光地との差別化が課題。このため、県はコロナ禍で高まったアウトドア需要に着目し、茨城県の豊かな自然や科学技術などとを組み合わせた体験観光を前面に打ち出す。

一方、タイ側は観光地や寺社仏閣を数多く巡り、花の鑑賞や絶景の撮影、食の楽しみを求めるニーズに応えたい考えだ。

県は県内観光地や体験施設の事業者と連携し、タイ側の要望に可能な限り対応していく方針。その上で体験観光の魅力を体感してもらうため、同国でも人気のあるサイクリング、仏教国として需要が見込まれる写経体験などを粘り強く訴えていく。

県国際観光課は「茨城県の強みを生かした体験観光を何度でもアピールする。茨城にこそ行きたいとの機運をタイで醸成したい」と意欲を示した。