《まち里歩き》▼スタート地点 いせさき明治館(伊勢崎市曲輪町) 中心街に歴史の跡
商店や居酒屋が立ち並ぶ伊勢崎市の本町通り。絹織物の伊勢崎銘仙が盛った頃と比べてにぎわいが薄れてしまったとの声もあるが、老舗の茶店や文化観光施設など、今も見どころは多い。少し肌寒さを感じる秋空の下、通りの周辺を歩いた。
伊勢崎銘仙にまつわる展示や行事を行ういせさき明治館(同市曲輪町)からスタート(➊)。1912(明治45)年に建てられた医院を活用した同館は、現存する県内最古の洋風医院建築とされる。館内には、さまざまな色や柄の銘仙が飾られ、建物に施された和洋折衷の意匠と相まって、きれいだった。
明治館から北へ向かうと、れんが造りの塔のような建築物(❷)が見えてきた。市指定重要文化財の旧時報鐘楼だ。15(大正4)年に建てられたが、時報としての役目は、37年に警察署望楼のサイレンに取って代わられた。れんがには伊勢崎空襲(45年)で焼け付いた跡が残り、近年は戦争の惨禍を子どもたちに語り継ぐ観点からも注目されている。
本町通りから南へ入ったところに伊勢崎神社がある。木々が色づいた境内は、七五三のお参りに来た晴れ着姿の親子連れでにぎわっていた。拝殿正面の上部に、飛行機のプロペラが据え付けてあった。「戦時中に飛行機が無事に帰ってくるように中島飛行機から奉納されたものです。現在は渡航安全・航空安全のシンボルとしてお祭りしています」。禰宜(ねぎ)の斎藤宏平さん(30)がその由来を教えてくれた。
伊勢崎市を南北に走り、澄んだ流れをたたえる広瀬川。新開橋の上に立つと、赤城山がよく見えて気持ちいい。橋は、高崎市浜尻町からの42.5キロを結ぶ高崎伊勢崎自転車道の終点となっており、この日も散歩を楽しむ人の姿が見られた。
橋の脇にある休憩施設「まちかどステーション広瀬」で一休みして、最後の目的地である相川考古館に向かった。相川之英館長(64)の祖父、之賀さんが収集した埴輪(はにわ)や文献史料を収蔵・展示する。
「展示のほかに講演会や史跡見学会なども催しています」と相川館長。扇を的に投げて得点を競う「投扇興」や、トランプの神経衰弱のように対になった貝殻を取り合う「貝合わせ」といった昔遊びの体験も行っている。
武装した武人や琴を弾く人を表現した国指定重要文化財の埴輪4点は、太古のロマンを感じさせてくれた。
夕方に取材を終えると、辺りはすっかり暗くなっていた。近づいてくる冬の足音を感じながら、帰路に就いた。
(文化生活部 丸山卓郎)
≪コースの特徴≫
約2キロ。本町通りは県道前橋館林線上にあり、交通量が多い。
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