《まち歩き・里歩き》宮崎公園 (富岡市) 自然豊か 心に春風

上毛新聞
2016年3月30日

ㅤ春本番がすぐ近くに感じられるようになった。県内でもサクラ開花の知らせが聞こえてきた。朝晩は若干の寒さが残る富岡市宮崎の宮崎公園を出発し、春を肌で感じようと歩を進めた。
ㅤ同公園は、しののめ堂と呼ばれる六角堂や展望台があり、市内を高くから見渡せる。4月中旬にはサクラや菜の花など自然の色があふれる。擦れ違った小学生から「こんにちは」と元気なあいさつを掛けられ、心に春風が吹いたようだった。
ㅤ園内にあるのが旧茂木家住宅=写真。戦国時代にあたる1527(大永7)年の建築で、国重要文化財に指定されている。観覧料100円を払い中に入ると、古民家の香りと圧倒的な存在感のはりに息をのんだ。同市神農原地区の大山城主の子孫が住んでいたという。いろりの端に座り、当時の暮らしを想像した。
ㅤ公園を後にし、住宅地の中に「洋ラン見学」の看板を見つけた。温室には大きさも色もさまざまなコチョウラン。ここマルイ洋蘭開発センターでは、年間20種類、17万株を全国に出荷している。母の日に最盛期を迎えるといい、温室ではスタッフが丁寧に植え込んでいた。
ㅤ優美な花を付けるのはオリジナル品種「赤レンガ」。富岡製糸場と絹産業遺産群が世界文化遺産に決まったことを喜ぶかのように咲いたという。出荷まで2年半を要する“箱入り娘”の出荷の見送りに、少し切なくなってしまった。伊早坂栄作社長(43)は「幸せが飛んでくるという花言葉に導かれるように、見た人が笑顔になるのがうれしい」とほほ笑んだ。
ㅤ今にも咲こうと、つぼみを丸く膨らませたサクラ並木に誘われ貫前神社へ。申(さる)年の今年は、12年に1度の式年遷宮が始まる。社殿の修繕のため12月に神様が仮殿に移され、来年3月に本殿への遷座を行う。千年以上続いていると聞き、いにしえに思いをはせた。
同神社の隣には格式高い近代和風建築が建つ。市社会教育館で、展示会やコンサートなど催し物の会場にもなっている。1934年の天皇陛下行幸を記念して建てられ、現在もきれいに維持されている。
ㅤふと目に入った小さな丘。よく見ると市指定史跡の太子堂塚古墳だった。当時の姿はとどめていないものの、前方後円墳で全長約70メートルの規模だったと推定されている。6世紀後半、周辺の地区を治めた首長の墓と考えられており、古代の人も同じように春を待ちわび、訪れを喜んでいたのだろうかと感じた。誰にとっても幸せな春になればと空を見渡した。

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