ふるさとは常に優しく 【とちぎロケ地巡り】 行屋川水辺公園(真岡)

下野新聞
2021年10月4日

 夕日が行屋川の水面(みなも)を淡いオレンジに染める。水際では、ヒガンバナが秋の風に揺れていた。

 真岡市台町の「行屋川水辺公園」は、2020年公開の映画「ステップ」のロケ地の一つとなった。同作は、重松清(しげまつきよし)さんの同名小説が原作。妻に先立たれた健一(けんいち)と娘美紀(みき)の10年間の歩みや周囲との絆を描く。主演は山田孝之(やまだたかゆき)さん。美紀役は、成長に合わせて3人の子役が演じた。

 県内では茂木町の民家も、義母の地元という設定でロケ地に。健一は美紀と一緒にお盆を田舎で過ごし、亡き妻に思いをはせる。同公園では灯籠流しの撮影が行われ、水面に浮かぶ優しい光を見送る健一ら家族の姿が、印象深いシーンとなった。

 灯籠流しの撮影には、地元エキストラ約200人が参加。当時、県フィルムコミッション担当者だった藤田雅彦(ふじたまさひこ)さん(35)によると、祭りらしい服装という指定もあり、大勢の市民が浴衣姿で協力した。藤田さんは「市や町の担当者らの協力が撮影につながった。地元のみんなで作り上げた、という視点で見てほしい」と話す。

 市街地に位置する同公園。普段は地元住民の散歩コースとして親しまれている。春には川の両岸を桜が彩り、桜まつりが開催される人気の花見スポットだ。8月の終戦記念日には映画と同じ灯籠流しも行われる。コロナ禍の影響でどちらも2年連続中止となったが、川のせせらぎは変わらず人々を癒やし、にぎわいが戻る日を待っている。

 ■メモ 灯籠流しで川に設置された足場は地元業者が製作。灯籠はエキストラやスタッフが絵や願い事を書いて、リアリティーのあるシーンを作り上げた。茂木町の民家は実際の住居で、交渉を重ねた末に撮影協力を得たという。

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