《まち里歩き 探検隊》赤城南麓 豊かな冬

上毛新聞
2019年2月21日

山上城跡や山上多重塔などの文化財が多く残り、歴史の薫り漂う桐生市新里町。県立ぐんま昆虫の森を出発し、赤城山南麓の自然豊かな土地を歩いた。

昆虫の森は、全国の昆虫展示施設の中で最大級の規模を誇る。45ヘクタールの敷地には雑木林や小川があり、昆虫を手に取って観察することができる。館内には、国内外の昆虫の生体や標本が数多く並ぶ。
昆虫専門員の茶珍護(ちゃちんまもる)さん(40)が、昆虫ふれあい温室を案内してくれた。容積は1万6000立方メートルで、昆虫を展示する温室としては国内最大。亜熱帯の環境が再現され、オオゴマダラやシロオビアゲハなど九州や沖縄のチョウが見られる(❶)。茶珍さんは「チョウと同じ空間で観察できるのが最大の魅力」と話していた。


新里総合グラウンドに立ち寄ると、女性たちがグラウンドゴルフを楽しんでいた(❷)。地元の老人会のチームに所属し、天気の良い日に有志で練習しているという。少し体験させてもらったが、地面の凹凸のためにラインが読めず、想像以上に難しかった。

早川貯水池(❸)は、120万立方メートルの水をため、新里町とみどり市笠懸町、伊勢崎市赤堀地区の農地を潤している。水面を悠々と泳ぐカモの姿に心が和んだ。


右手に赤城山の雄姿(❹)を望みながら、ガラス製品の工房「メルハバ」へ向かった。作家の小林大輔さん(37)が昨夏に構えた工房で、ちょうど制作中だった(❺)。さおの先端に溶かしたガラスを付け、息を吹き込んで膨らませ、さおを回転させながら成形していく。ガラスの塊が見る間に皿の形になっていく様子は圧巻だ。吹きガラスの魅力を「一つとして同じ作品ができず、一瞬一瞬が勝負であること」と捉える小林さん。グラスや愛らしい動物の置物などの作品は、工房内のギャラリーで見ることができる。


中塚古墳(❻)に到着した。7世紀に築造された直径38メートルの円墳だ。この辺りの大字は新川で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)「世界の記憶」の上野三碑のうち、山上碑に刻まれた「新川臣(にいかわのおみ)」の墳墓とする説がある。石室の中をのぞくと、こけむした切石が整然と積まれ、確かな歴史と当時の技術力の高さを感じた。

【ちょっと一息】地産地消こだわる 楽膳やまもと(桐生市新里町武井)


元は宴会場の建物を2014年、飲食店に改装した。和食、洋食それぞれに料理長がいて、本格的な料理を比較的手頃に楽しめる。
昼は、楽膳ランチ(1382円)がよく出ている。刺し身や天ぷら、ミニそば(うどん)のほか、赤魚の一味しょうゆ焼きやサワラの西京焼きなど日替わりの魚料理が付き、ボリューム満点。
予約制のコース料理(3千円~)は、チキングリルや牛ステーキといったメインに揚げ物やすしが付き、夜を中心に人気だ。
みどり市産のコシヒカリを使うなど地産地消にもこだわる。山本領一社長(47)は「おいしい物をなるべく安く提供したい」と話している。問い合わせは同店(☎0277・74・5467)へ。

【メモ】
アップダウンのある約5キロ。特に早川貯水池周辺や、ぐんま昆虫の森から中塚古墳へ向かう道は勾配が強い。国道353号を除いて交通量は少なく、見晴らしの良い場所が多いので気持ちよく歩くことができる。

【本日の探検隊員】 わたらせ支局丸山卓郎記者 武井廃寺塔跡もお薦め
子どもの頃に昆虫が好きだった記者にとって、昆虫の森は何度訪れてもわくわくさせてくれる施設だ。24日まで開かれている「昆虫たちの冬越し展」では、普段目を向けることの少ない冬の虫の姿が紹介されている。コースには入らなかったが、中塚古墳の近くに国史跡の武井廃寺塔跡があり、訪れる際には一緒に見てほしい。