《まち里歩き 探検隊》「亥」の岩から蔵の町

上毛新聞
2019年1月9日

年初から体を動かせば、1年が明るく始まる気がする。今年のえと、「イノシシ」の岩があるという渋川市の渋川八幡宮をスタートし、良い年を過ごせるよう縁起物にあやかる散歩に出掛けた。

渋川八幡宮は、建長年間に鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請したと伝えられる由緒ある神社だ。境内には十二支に見立てた岩があり、多くの参拝客に親しまれている。全て自然のままの姿の岩だが、えとのイノシシの岩は、耳や目に見える凹凸があり、確かによく似ている(❶)。


特に八幡宮では、古くから災害や障害をはらってくれる守り神として、イノシシを大切にしてきたそうだ。境内には他にもイノシシの岩があり、お気に入りを探してみるのも楽しい。
市街地に向かう長い坂をゆっくり下り、渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館を訪れた。銀行だった建物を活用した美術館は、立地の良さから電車の待ち時間や買い物帰りに立ち寄る人も多いという。3階の企画展示室では、渋川市出身の美術家、衣真一郎さんと同市在住の画家、高橋敬子さんの2人展(14日まで)が開かれていた(❷)。

「ちょっとした非日常を楽しんで」と高橋さん。今まで美術館は敷居が高いと感じていたが、散歩の休憩がてらにも立ち寄っていいと気付き、町歩きの楽しみが増した。

近くに「へそ石」があると知り、見に行った(❸)。

かつて坂上田村麻呂が「この地こそ日本の中心、この石を臍石と定める」と話したとされる石で、渋川が日本の真ん中である由来の一つという。石の隣には地蔵が立っていて、へそをなでながら祈願すると御利益があるらしい。記念スタンプもかわいくて思わず押してしまった(❹)。大事に持ち歩こうと思う。


パワーももらった気がして、旧子持地区まで足を延ばした。城下町や市場町として栄えた白井宿は、今も蔵造りの家々が残る(❺)。

約900メートルの町並みは、つるべ井戸や石橋が点在し、情緒たっぷりだ。最後に寄った道の駅こもちは白井城をイメージしている(❻)。

人気商品で、おなかに餅が入った特製「こもちたいやき」を味わいながら、今年もたくさん食べ歩きを楽しもうと誓った。

【ちょっと一息】ショウユヤ(渋川市白井) 白井宿になじむ土壁
手作りの婦人服と雑貨を扱う店として5年前にオープン。現在はカフェとしても営業している。店名は屋号の「醤油屋」からつけたそう。白井宿の町並みとなじむ土壁の外観が目を引く。
おやつにぴったりなのは、アイスをのせたホットケーキ(380円)。ハーブティーやコーヒー(各350円)など飲み物もそろう。


階段だんすを上った2階にも席があり、店主によると、春は八重桜が見えるという。アンティークの調度品もおしゃれで、ゆったりとした時間が過ごせる。
午前11時~午後5時。水、木曜定休。問い合わせは同店(☎0279・24・1092)へ。

【メモ】4・7キロのコースで、ゆっくり歩いて1時間ほどかかる。幹線道路沿いも進むので車に気を付けて。吾妻川に架かる国道17号は、風が吹き抜けて寒かった。防寒対策をしっかりして出掛けてほしい。

【本日の探検隊員】文化生活部 平山二葉記者 ありがたい石たくさん
正月らしく縁起物の御利益にあやかろうと選んだ渋川市。へそ石に、えとの岩のほか、白井宿にも力石があり、歩いたからこそ出合えた発見だった。ありがたい石をたくさん見てきたので、今年はきっといい年になると思う。白井宿一帯は、春になると八重桜が咲き誇るそうだ。今度は花見を楽しみに訪れてみたい。