《水と生きる》アウトドア 豊かな資源が支え

上毛新聞
2017年8月10日

ㅤ「冷たーい」「チョー気持ちいい」。ぷかりと浮かんで流れに身を任せたり、滝つぼに飛び込んだり。体一つで渓流を下るキャニオニング。みなかみ町の利根川の支流、阿能川にツアー客の歓声がこだまする。
初めて体験した明原功樹さん(23)=千葉県=は「兄から『キャニオニングは楽しい』と聞いて申し込んだ。このㅤ夏はラフティングにも行く予定」。仲間の奥出貴之さん(24)=東京都=は「海やプールとは空気感が違う。自然を満喫できた」と声を弾ませた。
ㅤ急流の利根川本流をはじめ、滝が現れる支流や透明度の高い沢―。町内の河川はさまざまな表情を見せ、キャニオニングやボートで下るラフティング、ボディーボードを使うハイドロスピードといったアウトドアスポーツのメッカになっている。
ㅤ1990年代半ば、新たなレジャーの登場に、当初は理解が進まない時期もあったが、10年ほど前からメディアへの登場回数が増え、知名度が高まった。ツアー実施会社のビッグウェーブ(同町川上)マネージャー、田村国博さん(47)は「ブームは今も続いている。利用客のピークは夏休み中だが、水量が豊富な5~6月もいい」と教えてくれた。
ㅤ町内の事業者でつくるアウトドア連合会によると、約30社が取り組んでいる。加盟業者は河川の草刈りや清掃、合同のレスキュー講習など、連携して観光客を迎え入れる。毎年10月には、低価格で各種スポーツができるイベントも開催。連合会事務局は「通常のツアー客は県外がほとんど。町内、県内の方にも気軽に体験してほしい」とより幅広い層の参加に期待を寄せる。
ㅤ人気の背景には恵まれた地域資源の存在がある。「みなかみでは春から秋までラフティングができる。これは、当たり前のことではないんです」。利根川上流の水質を研究する群馬高専の青井透特命教授は強調する。
利根川は上流に矢木沢や奈良俣など大規模ダムがあり、時季や貯水量によって放流量が調節されている。これに対し、町内で合流する湯檜曽川にはダムがなく、春先から谷川岳などの雪解け水がそのまま流れ込むおかげで、長期間水量が保たれ迫力あるスポーツが楽しめる。
ㅤ水質も評価が高い。青井教授の研究室が2012年、利根川と湯檜曽川の計7地点で行った水質測定によると、生活排水の混入を示す塩化物の濃度などが極めて低かったという。「みなかみユネスコエコパーク」登録も、豊かな自然環境へのお墨付きとなった。
ㅤ「首都圏から車で2時間以内。これだけ豊富な水量と良好な水質に恵まれている流域は他にない」(青井教授)。みなかみ観光を代表する存在に成長したアウトドアスポーツは、貴重な水資源に支えられている。

 
【メモ】みなかみ町によると、入り込み客数は年間400万人前後で推移しているが、2016年度はスキー場の雪不足などが響いて前年度比14%減の366万5831人。今年は「みなかみユネスコエコパーク」の登録を追い風に、自然との共存を前面に打ち出して誘客している。

 

※写真=キャニオニングを楽しむツアー客。清らかな流れを肌で感じられるのが魅力だ=みなかみ町の阿能川

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