《上州ブランド図鑑》オランダコロッケ とろけるチーズ 素材の味生かす

上毛新聞
2017年7月10日

揚げたてコロッケを頬張ると、中からとろりとチーズが出てくる。ジャガイモの甘みとチーズのコクが良く合い、もう一口と止まらない。高崎名物の「オランダコロッケ」は、市民だけでなく県内外にも多くのファンを持つ人気グルメだ。一風変わった商品名も話題を呼び、高崎のPRに一役買っている。(和田亮介)

◎誕生は17年前
オランダコロッケの誕生は17年前の2000年にさかのぼる。この年、高崎市制100周年と日蘭交流400周年を記念し、市内で「オランダ王室展」が開かれることになった。
王室展は東京、京都、そして高崎を巡回した。なぜ高崎でオランダを紹介したのか。結び付けたのは一人の医者だった。
江戸中期の高崎藩医、嶺春泰(1746~93年)。蘭学を志し、「解体新書」制作に関わった前野良沢に学んだ人物だ。この嶺にスポットを当て、市制100年の節目に王室展を誘致した。
市はオランダ文化に広く触れてもらおうと考え、演奏会や写真展などの関連イベントを数多く企画した。そんな中、オランダにちなんだ新グルメを生み出そうという話が持ち上がる。
オランダにはもともと、日本のコロッケに似た「クロケット」と呼ばれる名物料理がある。中身はクリーム系が多く、ジャガイモ以外にも麺や米、魚介、チーズなどさまざまな種類がある。街中の自動販売機でも売られている身近な食べ物だ。

◎地元に定着
当時イベントの準備に関わった市の担当者はクロケットを試食した。「手軽で日本人にもなじみのある味にできると思い、これを作ってもらおうと決めた」
単に再現するのではなく、オランダの特産品であるチーズを入れて「オランダコロッケ」と命名し、日本人好みの味を目指した。
市は、地元の精肉店やスーパーに、チーズ入りコロッケの開発を持ちかけた。当初は15店舗が賛同し、それぞれオリジナルのオランダコロッケを販売した。ただ、企画展が終わると徐々に減少。現在提供する店は数えるほどだが、地域の味として定着している。
まつしま肉店(同市新町)は、大葉1枚をそのまま入れている。店主の笠原勉さん(66)は「味にパンチを出したかった」と意図を明かす。チーズは本場オランダ産のゴーダチーズにこだわる。
発売当初、チーズ入りコロッケという食べ慣れない味は敬遠された。10個ほどしか売れない日もあった。だが徐々に知名度は上がり、現在は1日200~300個ほど売れる看板商品になっている。
大型スーパーの進出で街の精肉店が姿を消す中、揚げたてで提供するオランダコロッケは、なくてはならない存在になっている。

◎不動の人気
「当初はイベント期間限定のつもりだったが、お客さんに『やめないで』と言葉を掛けてもらえたから続けられた」。平井精肉店(同市大橋町)の店主、平井浩明さん(56)は当時を懐かしむ。今では不動の1番人気だ。
男爵イモをベースにタマネギやベーコン、パセリを加え、数種類のナチュラルチーズを包んで揚げる。チーズは熱を加えると伸びる見た目のインパクトはもちろん、くせがなくて他の素材の味を引き立てる。
絶妙な揚げ時間も重要だ。長く揚げるとチーズが衣の外に出てしまい、短いとチーズが溶けない。ちょうど良い揚げ時間なら切り口からとろりとチーズがあふれる。食欲をそそるその魅力に引き寄せられ、県内外から客が訪れる。取り寄せや通販注文も多い。

◎W杯で一日2000個
平井さんには忘れられない一日がある。2010年に開催されたサッカーのワールドカップで、日本がオランダと対戦した日だ。「強敵のオランダを食べてやっつけよう」と注文が殺到。その日だけで過去最多の2千個を売った。
20年の東京五輪・パラリンピックも再び脚光を浴びる好機とみる。「食べてもらっているのはまだごく一部の人。もっと多くの人に食べてほしい」。期待は膨らむ。

◎カレー店も販売 人気メニューに
カレーチェーンのCoCo壱番屋が展開する高崎市内2店舗で「オランダコロッケカレー」を販売している。高崎田町、高崎倉賀野の各店で扱い、700円という価格設定も人気の秘密だ。
2店ともにレシピは同じ。生パン粉を使用することで、カレーに良く合う衣のサクサク感を出した。チーズの種類にもこだわって、とろっとした食感を楽しめる。
田町店の担当者は「期間限定のつもりで始めたが、もはや外すことができない人気メニュー」と話す。40歳前後のサラリーマンがよく注文するという。リピーターが多い倉賀野店の担当者も「今後も提供し続けていきたい」としている。

【データ】2000年の「オランダ王室展」にちなみ、「オランダコロッケフェア」が同年4月中旬から7月中旬まで開かれた。15店舗が協力した。オランダ人による料理講習会も実施。現在のオランダコロッケの価格(1個)は、まつしま肉店が118円、平井精肉店は120円。

地図 →

この付近の観光ニュース →