笠間日動美術館 自画像、究極の自己表現

茨城新聞
2017年6月18日

古くから画家は自画像を描いてきた。自らの姿を客観的に捉え、世に出すことは、表現者としての意義を示す格好の手段でもあった。笠間日動美術館(笠間市笠間)で開催中の「カンヴァスの中の巨匠たち」展は、同館の自画像コレクションから国内外の画家60人を取り上げている。表情からにじみ出る虚栄や恥じらい、自己愛…。画面の奥底には作者の深い精神性が潜む。自画像とは、画家にとって究極の自己表現なのかもしれない。

「人は自身の顔や姿を直接見ることはできない。画家が鏡などで顔を見つめ、心の中で対話して描いた自画像には、ごまかしようのない内面や人格が表れる」と、同展を企画した同館の高橋美菜希学芸員。「自画像を通して巨匠たちの素顔を知ってもらい、美術作品に親しむきっかけにしてほしい」と話す。

同展では、国内の近現代の洋画家が手掛けた自画像と主要作品を中心に、海外の作品も並ぶ。色彩の明暗や筆遣いなどで、人生や心の内を投影した自画像からは、制作に込める精神性や価値観を垣間見ることができる。

国内では、相笠昌義さんや稲垣考二さんをはじめ、入江観さん、奥谷博さんら第一線で活躍する現存作家が、それぞれの技法を駆使して存在を主張。朝井閑右衛門、梅原龍三郎、安井曽太郎ら物故作家も重厚な姿を示している。

井上悟さんは、現代社会の人間模様をユーモラスに描き続けている。素材となる人物には、感情の表現に欠かせないパーツである眉毛が描かれていない。見る側に感情の読み取りを難しくさせ、不思議な世界観を確立している。「2010年自画像」は、少年時代の遠い記憶に思いを巡らせ制作。平面的な構成と、ぽっかりと口を開いた表情に郷愁を覚える。

城戸義郎さんは、精緻な写実を貫きながら精神性の高い、静謐(せいひつ)な作品を描いた。「Self portrait」は、中世ヨーロッパの伝統的な自画像様式を踏襲。深い黒の背景と、顔や着衣に施された陰影が強いメッセージを放つ。

松井ヨシアキさんは、20年以上前に渡仏して以降、パリの風景を主題にしている。「ポートレート(63才)」は、優しい色使いと、削り取りで生まれる立体感が、初老の穏やかな風貌をつくり上げている。

海外では、モイーズ・キスリング、パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、マルク・シャガールなどが並ぶ。

キスリングは、魅力的な肖像画や女性像を数多く残した。静物画「水仙の花」とともに展示された「自画像」は、強烈なまなざしが印象的で、威厳と、意志の強さが感じ取れる。

ピカソが80歳を過ぎて描いた「画家とパレット」は、画家である本人を登場させ、様式にとらわれることなく自由に描かれている。迷いのない大胆な筆致には、晩年を迎えても、尽きることのない創造力が発揮されている。

会期は7月30日まで。月曜休館。問い合わせは同館(電)0296(72)2160

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