茨城県北芸術祭 作品を見に行く(3) 常陸大宮 絵の情景と教室が融合

茨城新聞
2016年10月5日

常陸大宮市では4会場で17の作家やチームの作品を鑑賞できる。いずれも同市の豊かな自然と調和した作品で、鑑賞意欲をかき立てられる。悩んだ末、今回は本県出身の内海聖史さんと山本美希さんに注目。2作家の作品がある「石沢地区空き店舗」と「旧美和中学校」に車を走らせた。

石沢地区空き店舗は、水戸方面から国道118号で同市街地に入り、市役所南交差点の約200メートル手前、左側に見える県北芸術祭ののぼり旗が目印。内海さんの絵画「moonwalk」シリーズの大小5作品が展示されている。

建物に入ると、目の前に現れる巨大な絵画(高さ10・0メートル、幅7・6メートル)のスケールの大きさに圧倒される。「建築空間の中で絵画はどうあるべきか」を問いながら作品を展開する作者が「室内に入らない絵画」として作成。高さ約8メートルの室内の中央に足場を組み、斜めに立て掛けた。大きさも異なる黄色のドットを無数に重ねた作品が、タイトルを連想させる。月面から地上まで続く滑り台のようで、天窓から差し込む自然光の角度で印象が変わるのも面白い。

続いて旧美和中へ。閉校当時の備品が今も多く残る校舎内に芸術の息吹が吹き込まれ、外観からは想像もつかない“現代アートのテーマパーク”になっている。子どもが学校に登校する感覚で芸術に触れられるこの上ない場所だ。

山本さんの長編漫画「爆弾にリボン」を題材にした作品は、2階「3の1」の教室で出合える。女子学生が通う学校の情景や小さなハプニングを描いたピクチャーブックの原画の内、32枚を特別編集。それぞれを木製スタンドに掲示し、ストーリー仕立てに配置した。言葉がなく絵だけで読み取る物語だが、伸びやかで卓越したモノクロの線で表現された絵のうまさと構図の良さが際立ち、鋭い感性で描かれた女子学生の思春期の心の内が伝わってくる。笠間市の女性(23)は「絵の風景と実際の教室の風景が重なり、本当にこの教室で起こった物語かと思えた」と話す。

その他の作家の作品も、各教室をうまく生かした展示が目を引く。調理室では野菜を観察する望遠鏡、理科室では標本や実験器具、地域の植物や昆虫を活用した作品を展示。「どこまでが作品で、どこからが備品?」。鑑賞センスを問われているかのようだ。

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