《やってみチャオ》写経(高崎市) 静かな空間で一文字に集中
手で文字を書く機会が少なくなっている。時には気持ちを落ち着け、文字を書いてみようと、写経を体験できる「一路堂CAFE」(高崎市)を訪ねた。
カフェは白衣観音近くの崖下にひっそりとたたずむ。元は約3万点の観音画を描いた骨董(こっとう)商、馬場一路さんの遺作を展示するギャラリー。2年前に慈眼院住職の長女、橋爪真理子さん(28)がお寺で行っていた「写経の会」をヒントに、気軽に写経を体験できるカフェをオープンした。
写経部屋は約24畳の畳の間。観音山の自然と向き合える大きな窓に面して机が並ぶ。ここで、半紙に薄く印刷したお経を筆ペンでなぞる。午後の木漏れ日が揺れる窓辺で、初めての写経に臨んだ。
パソコンやスマホの普及で文字を書くことが減っており、筆ペンにも慣れてない。手が震え文字が乱れた。書くスピードが速く、せっかちな性格がこんなところに出ると反省。「うまい、へたではなく丁寧に書くことが大切」という橋爪さんの言葉を思い出した。
静かな空間で聞こえるのは、空調や半紙と筆ペンが擦れ合う音だけ。あっという間に1時間が経過。記名後に願い事を書いて終了となった。落ち着いた気持ちで書いた文字は丁寧に、そうでない文字は粗雑になるようだ。毎日慌ただしい時間を過ごしている。たまには自分を落ち着かせ、向き合う時間も必要だと感じた。
書いたお経は持ち帰りもできるが「心経寳塔」に納めると、毎年10月17日に供養してもらえる。初めての体験で緊張したせいか、最後にいただいたお抹茶のほろ苦さが体に染み渡った。「桜は写経部屋から見るのが一番見事なんですよ」。橋爪さんの一言に、次は桜の季節に訪ねてみようと思った。
【メモ】写経体験は15分(50文字)、30分(100文字)、1時間(260文字)の3種類でいずれも500円。11時半から14時のランチタイム以外、空いていれば予約なしでも体験できるが予約した方が確実。営業は10時半~16時半、木・金曜休み。問い合わせは同カフェ(☎090・2475・4893)へ。
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