神栖・息栖神社 道路拡幅 三社詣で振興 住民ら「観光復活の目玉に」

茨城新聞
2016年2月7日

東国三社の一つ、息栖神社(神栖市息栖)のにぎわいを再び取り戻そうと、地元住民らが団結し、本格的に動き出した。ほかの鹿島神宮(鹿嶋市)、香取神宮(千葉県香取市)と比べ、こぢんまりとして参拝客も少ない息栖神社だが、江戸時代後期から昭和初期にかけては三社詣での流行で一大観光地だった。先月、住民の長年の要望が実り、大型観光バスが通れるよう周辺道路の拡幅工事が開始。地元住民らの対策会議も開かれ、アイデアを出し合った。

江戸時代、利根川の河川改修で水運が発達し、東国三社詣でが大流行、関東以北の人は伊勢神宮参拝後に「下三宮巡り」と称してこの三社を参拝した。息栖河岸は遊覧船も行き来し、旅館も立ち並び、松尾芭蕉や徳富蘆花ら文人墨客も多く訪れ、水郷風景を愛して作品に残した。しかし、交通の発展や鹿島開発などを背景に、時代とともに同地域のにぎわいは薄れていった。

1月中旬、三社詣での振興を願う地元の要望を受け、神社の周辺道路や交差点の県、市による拡幅工事が始まった。長年にわたり要望してきた同神社権(ごん)禰宜(ねぎ)の荒井昭男さん(87)は「神社に入る道は狭く、大型観光バスの出入りが難しい。三社詣での団体客の観光ツアーでも、鹿島、香取だけの参拝で、息栖が飛ばされることがある。道路が広くなって参拝客が増えたら」と期待を寄せる。道路は3月下旬の完成予定で、1車線から2車線に拡幅され、歩行スペースも広くする。

1月末には地元住民らが社務所に集まり、同神社のにぎわい復活へ向け、対策会議が初めて開かれた。氏子総代を中心に、消防団、青年団、市観光協会、市職員ら幅広い年代の住民が座敷で膝を交えて意見を出し合った。野口弘行市観光協会長(57)も「かつてのにぎわいを取り戻し、観光の目玉にしたい」と意気込んだ。

対策会議では、神社主体の祭りの開催、お茶の飲める店の出店、観光ボランティアの発足、御神水の販売や新たなデザインの絵馬や御朱印帳の作成など次々と意見が出た。道路拡幅後の参拝客増も想定し、みこなどを新たに雇うための資金対策も話し合った。

同神社には、日本三霊泉の一つで恋愛成就の御利益がある「忍潮井(おしおい)」もあり、隠れたパワースポットとして知られる。氏子総代会長の鈴木利雄さん(66)は「若い人の意見も聞いてみんなで息栖神社のにぎわいをつくりたい」と話す。

同神社は森の中にひっそりと静かにたたずむ魅力もある半面、人けが少なく寂しい。対策会議は今後も定期的に行う予定だ。

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