《いばらき御朱印めぐり》城里・徳蔵寺 目の前で筆勢力強く

茨城新聞
2022年10月14日

■手軽八十八カ所巡りも

細い長い急坂を上り、廃校の前を過ぎてさらに奥、茨城県城里町徳蔵(とくら)の徳蔵寺(とくぞうじ)(徳蔵大師)はある。真言宗の同寺は平安時代の末期、弘法大師の弟子、弁海上人が創建したと伝わる。本尊は大日如来だ。参拝の折には、弘法大師に帰依しますという意味の「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えよう。

一時期300人もの僧兵を抱え、1205(元久2)年、笠間の正福寺と争って同寺は焼けたが、残った伽藍(がらん)と仏像で再興された。

御朱印は「大日如来」「徳蔵大師」「寿老人」の3種。コロナ禍以前は「5月の大型連休などは大行列ができて1時間待ちもあった」と御朱印ブームを振り返るのは岸野教司住職(67)。

御朱印は住職が目の前で筆勢力強く書き上げてくれる。「最近は筆で字を書く機会も少ないし見ない。子どもなどは珍しそうにのぞき込んできますよ」(岸野住職)。

「迫力があって力強い文字を書くのが好き」と一枚一枚手書きする岸野教司住職

 

以前ほどではないが、まだまだ御朱印を求める参拝者は多く、書きながら弘法大師の話などをする。「ネットで検索して、都内、近県の若い人も多い。来る人はウエルカム。子どもにはまた来てねなんてね」

毎月第3日曜日には願い事を書いた護摩木をたく「弘法大師護摩祈禱(きとう)」も行っている。「結婚、子宝、宝くじ、試験合格などいやはや現実的な願い事が意外と多い」と苦笑い。しかし真顔に戻って「でも願いがかなって元気になってくれれば」。

本堂のすぐそばには長寿を授けてくれる佐竹七福神の寿老人。隣接する大師堂は1578(天正6)の建立。堂の周囲には当時の様子を伝える絵が掛かる。大師はもちろん弘法大師(空海)。中には鎌倉時代初期の作といわれる県指定文化財の木造弘法大師像を収める。大師堂自体も城里町の指定文化財だ。

境内には他に、仏様と四国の八十八カ所のお寺を彫った石が並び、全て回ればお遍路したことになる。

さらには、八十八カ所の砂をまとめて敷いた「お砂踏み場」もある。その上でお参りをすると、八十八カ所を巡ったのと同じ御利益が得られるという、ありがたくもお手軽な場所だ。「お参りして境内を散策し、『木』から『気』をもらって元気になってください」と岸野住職は笑って話を締めくくった。

■メモ
アクセス…城里町の国道123号「阿波山十字路」を西に曲がり県道112号(阿波山徳蔵線)を西進、七会体育館そば。笠間市の国道50号から県道35号(笠間緒川線)を北上、さくらトンネルを経て県道112号へ。
住所…城里町徳蔵874
電話番号…0296(88)3037
御朱印…1枚300円。受け付けは午前8時半~午後4時半。