《食いこ》鉢の木(水戸市) 秋に出合う栗むし羊羹

茨城新聞
2019年11月10日

その季節にならないと出合えない和菓子がある。水戸市のメインストリートに店を構える「鉢の木」の「栗むし羊羹(ようかん)」もその一つ。9月から12月末までの秋の風物詩だ。今年は例年より少し遅い9月9日から始まった。

店舗近くの工房で、店主の関貴之さん(53)が早朝4時から作り始める。完成までに約7、8時間かかるという。年季の入った木型を当てて切り分けると蜜漬けの栗が顔を出した。夜空に星をちりばめたよう。

8月、「今年はいつから」という待ちかねた人からの問い合わせに、「今年も頑張ろう」と気合を入れる。お盆が終わると、栗の産地である笠間市岩間地区に生育状況を確認に出向くのが恒例という。

同店は関さんの義父、荒井仁さんが1956年に創業した。荒井さんは東京の和菓子店「釜人鉢の木」からのれん分けのような形で古里に店を開いたという。義父の勧めで、関さんは28歳で会社を退職し、製菓学校で和菓子の基礎を学び、31歳で2代目となった。18年前に亡くなった初代の教えを受け継ぎ、和菓子作りに取り組む。

和菓子の肝ともいえる、あんは全て自家製。関さんがどら焼き、もなか「梅吹雪」、黄身あんのまんじゅう「香雪」などそれぞれの菓子に合わせ、あんを作り分ける。北海道産の大納言小豆や手亡(てぼう)豆(白インゲン)など素材を厳選。砂糖は白ざらめ。「純度が高くえぐみがない。すっきりした甘さに仕上がるから」。手間を惜しまず、一粒ずつ豆を選別することから始め、手入れの行き届いた銅鍋で炊き上げる。

栗むし羊羹のもととなるこしあんは何度も水にさらしあくを抜き、白ざらめで煮詰めていく。軟らかい落がんのような「しおがま」は極めて細かい上質なもち米粉で作り、しっとりとした水あめ入りのあんを合わせる。

「日によって少なからず違う気温や湿度を確かめながら、あんを作らないと均一のものはできない。同じ物を常に提供するには自分で作るしかない」。しっかりとした硬さの本練り羊羹は1時間以上かけて手で練りあげるなど、職人の気概は随所に行き渡る。

■お出かけ情報
鉢の木
▼水戸市南町3の6の28
▼営業時間は午前9時半~午後6時半
▼定休は木曜(祝日は営業)
▼(電)029(221)5874

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