石岡・東筑波ユートピア エリア大改修、遊歩道も

茨城新聞
2019年8月30日

石岡市吉生の峰寺山にある自然動物公園「東筑波ユートピア」内に、イノシシの生態を間近に観察できるエリア「いのししのくに」がオープンした。同エリアは、公園の最上部にある約1ヘクタールのスペースで、四十数年前の開園当初はニホンザルを放し飼いにしていた。その後イノシシを飼うエリアに変わった。

高さ12~13メートルの柵で囲われた施設は老朽化が激しかったため、今回大改修した。生後間もないウリ坊から体重100キロを超える丸々太った大人のイノシシまで、約40頭が自然のやぶの中などで生活している。

改修に当たっては、イノシシの生活を邪魔しないよう、観光客用の遊歩道の下をくぐれる構造に工夫した。柵越しや、透明なアクリル板を通して目の前で観察できるスポットを13カ所設けるアイデアも施した。

入り口には展示施設があり、イノシシの毛皮や足の爪、世界の分布図などを展示。イノシシ猟の一つ「くくりわな」を紹介したり、野生のイノシシに遭遇した時の注意点を明記したりするなど、人間との“距離”についても問題提起した。

改修費用は、インターネットを介した寄付で資金を集めるクラウドファンディングで募り、5800万円を集めた。テレビの人気動物番組で、同動物公園の再興計画が企画・放映され脚光を浴びたことが追い風となった。

一方、オープンに至るまで改修工事の延期を余儀なくされるなど曲折も。2月の完成を予定していたが、愛知、長野県などで豚コレラが発生。影響を考慮してイノシシとの触れ合い、名物のイノシシと猿の曲芸ショーを自粛した経緯があり、オープンが当初の予定より5カ月延びた。

同園の小川高広代表(80)は「資金づくりに大きな不安を抱えていたし、工事中断など、いろいろあった中、ようやくたどり着いた。全国の多くの皆さまの支援は感謝しきれない」と話す。さらに、「野生のイノシシが人里近くの田畑で作物を食い荒らし、マイナスのイメージだけが強調されがちだが、人間と共存できる環境づくりも必要ではないか。イノシシは本来は人懐こい動物で、ここでたくさん触れ合い、動物愛護の心を育んでもらえたら」と期待する。

オープン初日に家族3人で訪れた桜川市の飯嶋賢治さん(58)は、改修計画に賛同し、クラウドファンディングで支援した一人。飯嶋さんは「大自然の中で自由に生活している姿が見られるのはいい」と話し、イノシシを間近に観察できて喜ぶ孫の男の子の姿に目を細めていた。

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