《食いこ》雪村庵(常陸大宮市) 茨城の食材、器で「美食術」

茨城新聞
2018年10月28日

のどかな田園風景が広がる常陸大宮市の「雪村庵」。店名は同市出身とされる室町時代の画僧雪村にちなむ。風格ある門に池を配した庭園、日本家屋と和の風情にあふれるが、和室、洋室で趣が異なる店内では、ランチ、ディナーともに数種類のコース料理を提供する。コンセプトは「お箸でも食べられるフレンチを中心とした『茨城ガストロノミー』」とオーナーシェフの藤良樹さん(38)。

藤さんは日立市出身。専門学校を卒業後、東京、鎌倉、水戸のレストランで修業し、雪村庵で働くようになった。5年前からオーナーシェフとなり、茨城ガストロノミーを提唱する。「ガストロノミーは美食術の意味。茨城の自然が育んだ食材を中心に、それに合う器や調理法を組み合わせてできる、おいしい料理を食べてもらうこと」と説明する。

藤さんの料理は、常陸大宮市の無農薬栽培の野菜や和牛、鉾田市のメロンやイチゴ、サツマイモ、笠間市のキノコや米、豚肉、かすみがうら市のカモなど、多彩な県産食材から生み出される。「現場に出掛け生産者の苦労やこだわりを聞くと、素材の奥が見えて来る」。生産者とタッグを組み、その季節に応じた調理を施す。

料理を彩る食器類は、同市の陶芸家や近隣のガラス作家が手掛けた。「料理が映え、味を引き立てる器をオーダーメードした」

深まる秋に合う料理は、ひょうたん型のバターナッツというカボチャをムースとピューレに仕立て、生のホタテ貝柱を合わせた一品。肉料理なら、県産カモもも肉のコンフィ。彩り豊かな季節の野菜を添えた。「コンフィは低温の油で煮揚げる調理法。軟らかく仕上がり、味がなじむ」と話す。

おもてなしも同店の魅力。妻の由香さん(33)がマダム(女主人)として接客する。「マニュアルやルールにとらわれず、お客さまの立場になってもてなし、笑顔でお帰りいただけるよう心掛けている」と細やかに気遣う。藤さん夫妻は「ここに来て茨城の食材を味わってほしい」とほほ笑んだ。

■お出かけ情報
雪村庵
▼住所は常陸大宮市下村田150の1
▼営業時間は午前11時半~午後3時(ラストオーダー同1時半)、午後6時~同10時(同午後8時)。要予約
▼定休は月曜、第2・3火曜
▼(電)0295(53)0330

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