《まち里歩き(MACHI SATO ARUKI)》スタート地点 JR桐生駅(桐生市末広町) 街に息づく織物文化

上毛新聞
2017年8月31日

歩くと楽しい街と言われる桐生。山と川に囲まれた、伝統と若者文化が入り交じる街で、どんな出会いが待っているのだろうか。期待に胸を膨らませて出発した。

桐生市の中心部にあるJR桐生駅は、通学や観光などで1日平均約4000人が利用する市の玄関口。駅構内の「桐生観光物産館わたらせ」には、地元の織物業者が製作したストールやネクタイをはじめ、花ぱん、ひもかわうどんなど桐生の名物が並ぶ。ピンクや黄色など色の種類が多く、スカーフのようなボディータオル「泡布」(1080円)が人気だ。
駅北口を出て、同市のメインストリートの一つ、末広通りへ。衣料品店や雑貨店など店が多く、ついつい足が止まる。ジャズバーもあり、夜も楽しめそう。本町通りとの交差点に着くと、FM桐生がガラス張りの公開スタジオで生放送中だった。宮坂あつこアナウンサー(37)は「顔と名前が分かるほど、リスナーとの距離が近いのが強み」と道行く市民に手を振った。
心温まりつつ直進すると、財界人の社交場として1919(大正8)年に建てられた「桐生倶楽部(くらぶ)会館」が見えた。4本の煙突や列柱の玄関ポーチなどの南欧風デザインはスパニッシュ洋式と呼ばれ、市重要文化財に指定されている。「桐生の文化を象徴するこの建物を、今後も残せるように努めたい」と桐生倶楽部の森寿作理事長(76)は話してくれた。
3月にできた旅とアウトドアのセレクトショップ「パーヴェイヤーズ」を見つけた。鉄工所跡を改装した2階建ての吹き抜けの空間には、設営した状態のテントや、日本中を旅するスタッフが選んだ服などがずらり。デンマークの人気アウトドアブランド「ノルディスク」の主力商品がそろう。
北東方面へ歩いて行く。桐生織の伝統工芸品などを製造販売する森秀織物が運営する資料館「織物参考館“紫(ゆかり)”」ののこぎり屋根が目に入った。藍染めや手織り体験が人気で、友人とハンカチを染めていた茨城県日立市の福田陽平さん(27)=写真=は「自分だけのハンカチができてうれしい」と喜んだ。明治~昭和期の織物の歴史をたどる資料約1200点も見ることができ、織都の薫りを存分に感じた。

さらに北へ進むと、観音院の赤ちょうちんが見えた。江戸時代の蘭学者、渡辺崋山の妹、茂登が眠る。毎月24日に縁日を開催しているほか、10月には紅葉の中でのバーベキューと、四国八十八カ所の霊場の砂を踏むイベントが控えるという。秋の行楽が待ち遠しくなった。
(桐生支局 丸岡 美貴)

≪コースの特徴≫
歩きやすい約1.8キロ。織都の歴史と新たな文化を感じられる。飲食店も多い。

【寄り道したら】豚骨アンテナヌードルズ 県産豚でチャーシュー
黄色が基調の明るい内装の豚骨ラーメン店で、岡田吉正さん(43)と妻の優香さん(37)が切り盛りする。テーブル席もあり、客の4割は女性だ。
塩豚骨ラーメン(690円)と炙(あぶ)りチャーシュー飯(300円~)がお薦め=写真。「豚骨を丁寧に下処理し、くせのないスープに仕上げた」と吉正さん。スープに絡む細麺は博多から取り寄せる。県産の豚バラ肉を使ったチャーシューは香ばしく、ご飯が進む。
夜はおつまみも充実し、ラーメンを食べる前に“ちょい飲み”する客も多いという。パクチーをポン酢とすりごまであえた「ポン酢パクチー」(300円)も人気だ。
午前11時半~午後2時半、午後5時半~同9時。水曜と毎月第3木曜休み。問い合わせは同店(☎080・6819・1022)へ。

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