六角堂や旧天心邸内に陶芸作品 展覧会「観月会」 22日まで 北茨城
岡倉天心(1863~1913年)が各界の名士を招いて開催した「仲秋観月会」をしのび、茨城県北茨城市大津町五浦の茨城大学五浦美術文化研究所で展覧会「観月会」が開かれている。太平洋に面する六角堂や旧天心邸内に、現代陶芸作家の松田路子さん(60)=同県笠間市=による作品を展示する。同所や天心の著作「茶の本」に触発されたものだ。同展は12月22日まで。
天心は05年、同所に六角堂を構えた。その後、美術団体「日本美術院」の絵画部門を移すなど五浦を拠点に日本美術の振興や国際的な活動を展開した。同研究所では長年、「観月会」名称で展覧会などの催しを開催。東日本大震災や新型コロナ禍で一時休止もあったが今年で21年目を迎えた。
松田さんは県窯業指導所(現県立笠間陶芸大学校)で学び、同県笠間市にアトリエを構える。展示では六角堂の中央に、風が抜ける構造物を積み重ねた作品を置いた。釉薬(ゆうやく)を使わず、もみ殻に埋めて炭化焼成することで独特の質感や色合いを出している。
松田さんは「天心は六角堂の窓を開け放ち、海風を受け、お茶でも飲みながら思索していたのでは。作品は送風機だと思っている」と語る。
旧天心邸内にも同じ構造物を畳の上に並べたり、地面から伸びるよう1本に積み重ねたりした作品を展示。邸内にある引き戸の中には白いユリをかたどった作品を飾った。作品を一部だけ見せることで想像の余地を与えている。「茶の本」からユリの花が登場する文章も紹介している。
松田さんは「展示をきっかけに、天心の言葉に思いを巡らせてほしい」と話した。同研究所の片口直樹所長(46)は「天心の精神は今もこの場所に根付いている。現代の作家に、この場所からインスピレーションを受けた作品を設置してもらい、天心や茶の本の世界をいろんな人に知ってほしい」と力を込めた。