果樹農家後継育成へ 「中里フルーツ塾」開講 1期生、栽培技術学ぶ 茨城・日立
茨城県日立市中里地区特産のリンゴやブドウの担い手を育成するため、市は今春、「中里フルーツ塾」を開講した。1期生2人が入塾し、今後1年間、生産者から直接手ほどきを受けながら栽培ノウハウを学ぶ。修了後は同地区で果樹農家として独立を目指す。
市西部の山間部に位置する里川沿いの下深荻地区には現在17軒の果樹園があり、市の地域ブランド認定品のリンゴやブドウなどを栽培。もぎ取り体験ができる農園もあり、「日立中里フルーツ街道」の愛称で親しまれている。
だが、後継者不足のため、果樹栽培が始まった1970年代に比べて生産農家は半数以下まで減少。生産者の中心は70代と高齢化も進む。このため市は果樹産地を守り、同地区の活性化につなげようと塾の開講を決めた。
栽培技術の指導は、JA常陸の里川西特産果樹生産部会と中里ブドウ生産部会の会員がそれぞれのほ場で行い、就農や定住に関する相談にも対応する。市は補助制度を設けて部会を支援し、塾生に対しては農機具の購入や研修機関の受講料などを補助する。
同市下深荻町のむとうリンゴ園で13日に開講式が開かれ、塾生や市職員、部会員ら関係者約20人が出席。里川西の武藤隆之部会長は「後継者の確保へありがたい取り組み。仲間として一緒に活動し、一緒に学んでいく」とあいさつ。中里の與沢竜一部会長も「塾を実りあるものにし、生産規模を維持していきたい」と述べた。
塾生たちは初日からリンゴ畑に入り、花の時季に養分を集中させるために行う摘花作業について説明を受けた。今後はJA常陸や県県北農林事務所の協力も得ながら来春までの1年間、実習や講習会に参加。剪定(せんてい)や袋かけ、施肥、摘果・摘房、収穫など各種作業の習得を目指す。
塾生の一人で市内在住の元公務員、根本智広さん(54)は「地域の人たちと合意形成を図りながら栽培技術を磨き、この素晴らしい里山の風景を次の世代に残していければ」と目標を語った。