107歳母著書 公民館に 茨城・鉾田の田中さん寄贈 40冊、弟や妹の作品も

茨城新聞
2024年2月1日

107歳の作家、田中志津さん(本名シヅ)の長男で、茨城県鉾田市在住の昭生さん(80)が、同市汲上の大洋公民館内の大洋文庫に、志津さんと2人のきょうだいの著書40冊を寄贈した。昭生さんは「茨城の人に家族の本を読んでもらえたら」と話している。

寄贈したのは、志津さんの著書のほか、同じく作家で弟の佑季明さん(75)=本名行明、詩人で妹の佐知さん(享年59)=本名保子=の作品。

志津さんは新潟県小千谷市出身。故郷の原風景などを描いた「信濃川」や、佐渡鉱山初の女性事務員として働いた体験を小説にした「佐渡金山の町の人々」などの著書がある。佑季明さんは随筆や詩、写真など幅広い分野で活動。佐知さんは2004年に直腸がんで亡くなるまで、多くの作品を残した。

志津さんは現在、福島県いわき市に在住。昨年は同居する佑季明さんが志津さんの言葉を口述筆記した随筆集「百六歳の言魂」を刊行している。

家族3人の著書を寄贈した昭生さんは、元商社マンで、16年に鉾田市に移住。自宅から程近い同文庫を利用し、愛着を持っていることから、昨年8月に寄贈した。毎月1週間程度、介護のため志津さんの元を訪れており、寄贈に対する市教育委員会からの感謝状を見せると、喜んでくれたという。

寄贈した際、同文庫は改装工事中だったため、寄贈本は同年12月、新設図書の棚に「田中志津コーナー」の表示を付けて並べられた。昭生さんは「家族の本とともに、大洋文庫の存在を市民や県民の皆さんに知ってもらえたら」と願った。