街に30組のアートが集結 アーツ前橋開館10周年記念企画で 群馬・前橋市

上毛新聞
2024年1月5日

昨年10月で開館から10周年を迎えたアーツ前橋(群馬県前橋市)の記念事業として、メイン企画展「New Horizon(ニューホライズン) 歴史から未来へ」が2月12日まで、同館や周辺市街地を会場に開かれている。国内外から30組のアーティストが参加し、12カ所に約90点を展示。地域を舞台とした同館の企画展では最大規模となっている。

同館は2013年の開館以来、「創造的であること」「みんなで共有すること」「対話的であること」の三つをコンセプトに、地域で多くのアート企画を実施してきた。同展は街と美術館をさらに一体化させる狙いがあり、監修した南條史生特別館長は「街と共に発展し、文化を築く美術館でありたい」と話す。

写真家で映画監督の蜷川実花さんは、かつてキャバレーが入っていた空きビルと白井屋ホテルでインスタレーションを展示している。前橋の印象は「他にはない面白い街。この場所にしかない空気、カルチャー、とがったクリエイターが集まっている。昭和のかけらが残っていて、文化の力で新しく生まれ変わっていくことも面白い」と語る。

イエメン生まれの芸術家、ザドック・ベン=デイビッドさんは同館で、金属のシートを切り抜いて制作した人の形のフィギュア約6000点を白い砂の上に並べた。性別や国籍が異なる人々が、ソーシャルメディアを使って 直接会わずに多くの人とつながる現代の希薄な人間関係の課題などを表現した。

人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新のテクノロジーを取り入れた作品も見どころ。レフィーク・アナドールさんは、「自然」をテーマにAIを使って数億枚の米カリフォルニア州の景色の画像を自動生成し、映像作品として編集。多くの来場者を引きつけている。

鑑賞を通じて街にも注目が集まる。会場のまえばしガレリア、白井屋ホテルなど近年建築されたアートと親和性が高い施設に触れることができる一方、空きビルや店舗など活気をなくしていたエリアへのにぎわいを創出している。

同館は午前10時~午後6時。水曜休館。作品鑑賞パスポートは一般1500円など。問い合わせは同館(☎027-230-1144)へ。

新たなチームで「スタート切る」

10周年を迎えたアーツ前橋の南條史生特別館長は、企画展名の「ニューホライズン」に「新しい出発」という意味を込めたと話す。展示内容にもテクノロジーや海外作家らの新たな視点などを取り入れ、「前橋に新しい風をもたらす」としている。

展示以外に地域住民を巻き込んだ関連イベントも多数開催。アートとの出合い、体験の機会を創出している。昨年10月には県庁昭和庁舎でプロジェクションマッピングを実施。海外作家の作品の他、一般から募ったイラストも投影し、3日間で計約8000人が来場した。11月は同市出身の造形作家、関口光太郎さんによる参加型の公開制作も行われた。

南條特別館長は、作品の紛失など「10年の間にはいろいろ問題もあった」と指摘。昨年5月に特別館長に就任した自身は、同時に就任した出原均館長らの新たなチームで「これまでになかった展覧会をやり、これからの10年のスタートを切るところを見てもらいたい」と力を込める。

白井屋ホテルに展示されている蜷川さんの「残照」