わさび付きのところてん 箸一本でつるりと 鹿火屋(群馬・吉岡町)《炎天のオアシス》

上毛新聞
2023年8月16日

群馬の名湯・伊香保温泉へと向かう道中に、江戸時代の茶屋を思わせる店がある。店内にエアコンはない。蚊取り線香の煙が漂い、ゆったりと時が流れる。屋号の「鹿火屋(かびや)」はシカやイノシシが畑を荒らすのを防ぐために火をたいた小屋を指す。

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突き棒で突いたところてん(300円)が名物。酢じょうゆと青のりをかけ、黄色いからしではなく、わさびが添えてある。こしがあり、箸一本でつるりとすすって涼を感じる。

自家製のくず餅(400円)、熱々の焼きとうもろこし(350円)も売っている。飲み物はらむね(200円)。かき氷はイチゴ、メロン、ブルーハワイの3種で各300円。冬になると蒸した里芋を串に刺し、みそだれを付けて焼いた郷土食の「いも串」を出す。

1966(昭和41)年の開業で、店主の飯塚雅男さん(58)は2代目だ。創業した父の昭男さんはちょんまげ姿で接客していた。「サービス精神が旺盛で、創意工夫の人だった」。

1937(昭和12)年に高崎市の観光ポスター第1号として白衣観音像を描いた同市のデザイナー、吉永得像(とくぞう、号は草玄)さんは昭男さんの人柄にひかれ、店をプロデュースした。近くにある水沢うどんの店に負けないようにと知恵を絞り、看板や絵を描いた。

昭男さんは昨年8月に他界した。「素朴ながらおいしいものを出そう」という思いは雅男さんが引き継ぐ。コロナが落ち着き、昔からの常連客、バイクや自転車で来てひと休みする人、外国人観光客が増えてきたという。


■鹿火屋
群馬県吉岡町上野田1329-127
営業時間 午前9時半~午後4時半
不定休
電話 0279-54-3920

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