寝転んで乗れるブランコで障害の子も一緒に…群馬・富岡市の公園に「インクルーシブ(包括的)遊具」
年齢や障害の有無にかかわらず全ての子どもたちが使える「インクルーシブ(包括的)遊具」の設置が、群馬県内の公園で始まっている。富岡市の富岡北部運動公園(もみじ平総合公園)は今春、寝転んだ状態でも乗れるブランコを初めて導入した。さまざまな特性を持つ子どもたちが共に遊べる環境を整えることで、互いの理解を促すきっかけにつながると期待が高まる。
「押すよー」。週末、親子連れでにぎわう同公園でひときわ人気なのは、円盤型のシートが特徴的なブランコだ。押すことで前後に揺れる仕組みで、複数人で一緒に乗ったりシートの上で寝そべったりできる。自力でこぐのが難しい子どもでも、宙に浮く感覚を楽しめるよう工夫して設計されている。遊び終えた子どもたちは、「揺れが少なくて、怖くなかった」「皆で乗れるのが楽しい」と笑顔を見せた。
富岡市都市計画課によると、市民が地域の課題を話し合った2019年度の「とみおか未来会議」で、同公園に誰もが遊べる遊具の設置を求める声が寄せられた。市は検討を進め、公園設備の更新に合わせて、インクルーシブ遊具「大型3連ぶらんこ」を設置した。
インクルーシブ遊具は1990年代以降に欧米で広がり、国内では2020年、都立砧(きぬた)公園(東京都世田谷区)に初めて整備された。全国の公園で導入が進んでいる。円盤型のブランコのほかに、スロープ付きの滑り台や車いすのまま遊べる砂場などがある。
ただ、公園への導入には課題もある。遊具製造を手がける日都産業(東京)によると、発注量が少ないため通常の遊具より2~3倍の費用がかかる。自力で移動が困難な子どもも利用できるようにするためには、遊具にアクセスできる駐車場が必要だと説明する。
「障害のある子とない子が一緒に遊べる設備があれば、小さい頃からお互いをもっと知ることができるはず」と語るのは、障害のある子どもの保護者でつくる「笑って子育てロリポップ」(高崎市)の石川京子代表。自身も医療的ケアが必要な長女を育てる。遊具の普及に加え、「障害児を優先して順番を譲るのではなく、声をかけ合って一緒に遊んでほしい」と一歩踏み込んだ利用を願っている。
群馬医療福祉大の原純子講師(子ども家庭福祉学)は「遊具は子どもの発達に必要不可欠。障害の有無にかかわらず、遊ぶ権利は保障されなければならない」と指摘している。
詳細はこちら