4年ぶり秘境のうどん屋復活 プレオープンにかつての常連、懐かしの味堪能 群馬・上野村
ひっそりとした山奥の峠で、老夫婦が切り盛りする小さなうどん店があった。地元住民やライダーに愛され、4年ほど前に惜しまれつつ閉店した群馬県上野村楢原の「峠のうどん屋 藤屋」。夫婦の長男、佐藤勝さん(62)が洋食店のシェフを辞めて店を継ぎ、7日に営業を再開する。5月末のプレオープン時には、うわさを聞き付けた常連らが訪れ、懐かしの味に顔をほころばせた。
プレオープン初日の27日、バイクで偶然店の前を通りかかった藤岡市の設楽浩之さん(46)は、営業再開を知って大喜びした。安中市の青木晃三さん(59)もかつてバイク仲間と通った常連。盛りの良いうどんを平らげ、「当時を思い出した」と満足そうに笑った。
佐藤さんの祖母、いねさん(故人)が創業した店は、同村と南牧村を結ぶ峠越えの道沿いにある。店を継いだ佐藤さんの両親が、手打ちの太麺に季節の野菜の天ぷらがのった「天ぷらうどん」を提供。ライダーを中心に遠方からも多くの客が訪れる有名店となり、開店から30分ほどで完売することも多かった。
ただ、晩年までうどんを作り続けた父、利夫さんが2年前に死去。同じ頃、前橋市内で洋食店を営んでいた佐藤さんはコロナ禍に苦しんでいた。家族の後押しもあり、「これがタイミングなんだと思った」と17年間続けた店の経営に区切りを付け、帰郷することを決断。昨秋からうどん店の再開に向けて準備を進めてきた。
改装した店には、キャッシュレス対応のレジや洋食店で使い慣れたオーブン機材を持ち込んだ。かつての座敷だけでなくテーブル席も用意した。
最も苦労したのは味の再現だった。天ぷらうどんにはレシピがなかった。佐藤さんは粉と水分量、こねる強さなどに試行錯誤を重ね、ようやく母の厚子さん(85)の合格点が出るうどんを打てるようになった。
当面は伝統の天ぷらうどん(700円)1本で勝負する。「常連さんから『昔と変わらないね』と認めてもらえたら、徐々に洋食も出したい」と意気込む。
佐藤さんは「昔は食べ終わったお客さんが座敷で寝ていたこともあったみたい。そんな、ゆっくりできる店にしたい」と笑顔で話している。火曜定休。問い合わせは同店(☎0274-20-7888)へ。
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