110歳、魂込めた一針 茨城・石岡の故上杉ミツ子さん 人柄しのぶ刺しゅう展 家族や写真家が企画
刺しゅう作家として多くの作品を残し、2018年に茨城県内最高齢(当時)の110歳で亡くなった同県石岡市の上杉ミツ子さんをしのぶ作品展「おばあちゃんは芸術家」が19日から、同市国府のまちかど情報センターで開かれる。親交のあった写真家とミツ子さんの家族が企画した。刺しゅう作品とミツ子さんの素顔を収めた写真を並べて紹介する形で、明治から平成にかけて、子育てと仕事、趣味に全力を注ぎ「生涯現役」を貫いたミツ子さんの人生に触れることができる。
ミツ子さんは1907年、宮崎県延岡市生まれ。結婚して2男5女に恵まれるが、40代で夫が急逝。後を継いで自動車販売会社「上杉モータース商会」社長となり、7人の子育てと会社経営に奔走した。
次男の勝己さん(79)=石岡市=を頼って2001年、93歳で同市に移り、ケアハウスに入居。趣味だった文化刺しゅうを本格的に始め、生涯で500点を超える作品を残した。公募展にも出品し、「県わくわく美術展」工芸部門では、10年から4年連続で入賞した経験もある。
水戸市の写真家、藤井正夫さん(85)が同展の審査員を務めていたことから交流が始まり、藤井さんはミツ子さんが亡くなるまで5年間、多い時は週に1度のペースで通い、写真を撮り続けたという。刺しゅうに熱中する手元や散歩する姿、季節の花と笑顔など、撮影した写真は5千点を超える。
今展は、ミツ子さんが亡くなって5年の節目を迎えたことから、勝己さんと藤井さんが企画。会場には、ミツ子さんの素朴な表情をとらえた写真15点と、深みのある刺しゅう作品15点の計30点をそろえた。
ミツ子さんは100歳を超えても元気で各地に出かけ、「ハッスルマダム」というあだ名が付くほど行動的だったという。
藤井さんは「刺しゅうから人生を感じた。深い味わいや温もりを、作品と表情から感じてほしい」と語る。勝己さんは、ミツ子さんの生き様や素顔に触れることで「来場者の励みになったらうれしい」と話した。26日まで。午前10時から午後5時(最終日は3時)。木曜休館。無料。