茨城・霞ケ浦キャビア完成 都内で試食会 日本一産地目指す 低塩分、うまみ 新鮮さ両立
霞ケ浦流域で育てたチョウザメの卵を加工した独自ブランド「霞ケ浦キャビア」を茨城県が完成させた。低塩分でおいしさに磨きをかけた。原料のチョウザメ稚魚の販売大手が県内にある利点を生かし、生産日本一を目指す。縮小する霞ケ浦漁業の新たな柱に充てたい狙いもある。
県内では霞ケ浦流域を中心にキャビアが作られている。つくば市にはチョウザメの養殖用稚魚を販売する国内最大の企業「フジキン」がある。同社の稚魚を使い、流域の河内町と桜川市の2社は廃校を利用し、地下水でチョウザメを養殖している。フジキンの担当者は「茨城の水は水温が高めで、水質もチョウザメの養殖に適している」と話す。
茨城産キャビアを名物にしようと、県は2022年度に高品質商品の開発に乗り出した。流域22市町村で養殖したチョウザメを加工した商品を霞ケ浦キャビアと定義。都内の有名シェフの監修を受け、レシピを考案した。塩分は一般的な輸入品の約4%より低い2・5%以下を実現し、フレッシュさとうまみを両立させた。
県によると、県産キャビアの生産量は年間約200キロ。国内市場は約20トンで、全国最多の宮崎県が1トン規模と推計される。
「霞ケ浦キャビア」のパッケージ(県提供)
茨城県は産卵時期の今秋から本格的な生産に着手し、数年間で倍増させ、将来的には日本一を目指す計画だ。コストダウンを図る技術開発にも力を入れる。
霞ケ浦をはじめとした内水面漁業を巡っては、魚など漁業資源の減少が続く。漁業者の新たな収入源として、霞ケ浦キャビアに期待する向きもある。
県は3月30日、霞ケ浦キャビアのお披露目イベントを東京都内で開き、監修したシェフが特別コース料理を振る舞った。メディアや県民を招待し、大消費地の東京でアピールした。
イベントで大井川和彦知事は「漁獲資源が不安定な中、養殖産業に転換しないといけない。霞ケ浦キャビアを新たな産業として興したい」と事業への意気込みを語った。
霞ケ浦キャビアはトキタ(河内町)とつくばチョウザメ産業(桜川市)が4月から、自社ホームページで販売を始めた。20グラム1万円。
キャビアはチョウザメの卵の塩漬けで、世界三大珍味として知られる。チョウザメは3億年前から存在する古代魚の一種。川でふ化し、湖や海に生息する。サメに似て、チョウのようなうろこが名前の由来で、学術的にはサメには分類されない。