山ちゃん、栃木に引っ越し 閉館する常陸大宮・山方淡水魚館のオオサンショウウオ

茨城新聞
2023年3月30日

今月いっぱいで閉館する茨城県常陸大宮市山方の市営水族館「山方淡水魚館」で、同館の人気者だった国の特別天然記念物、オオサンショウウオの引っ越しが始まった。県内では唯一という国産オオサンショウウオ2匹のうち、28日は32年前に来館し体長約100センチ、体重約12キロの「山ちゃん」が栃木県内の民間施設に送り出された。

山ちゃんは午前9時半過ぎ、今後の飼育、展示先となる日本両棲類研究所(栃木県日光市)の職員の手により、専用水槽から慎重に網ですくい出された。見学に訪れていた地元の常陸大宮市立山方小の児童たち約30人が見守る中、移動用の水槽に入り、ワゴン車で出発した。

オオサンショウウオを間近で見送った同小6年の佐藤雫さん(12)は、「淡水魚館には小さい頃に3、4回来た。オオサンショウウオやいろんな小さな魚がいて、楽しかった思い出がある」と名残惜しそうに話した。

同館のオオサンショウウオは、岡山県生まれの3匹が開館5年後の1991年に仲間入りした。名前は公募で「里山大好きくん」に決まり、3匹にそれぞれ「里ちゃん」「山ちゃん」「大好きくん」と命名した。

5年前から同館を任された高林暁一郎さん(70)は、餌にアユを加えるなど、工夫して育てた。3匹とも体長が1メートルを超えるまでに成長。「里ちゃん」が2021年5月に死んで、現在は2匹になっていた。

同館を所管する同市の西野国博産業観光部長は「水生生物がいなくなっていくのはさびしいことだが、同館の歴史は人々の記憶に残る」と前を向いた。

もう1匹の体長約122センチ、体重約21キロの「大好きくん」は、4月上旬に同研究所に移動する予定。ほかの水生生物は同月以降、県内施設に移動し、全ての生き物を搬出することが決まっている。施設の跡地について、市は今後の活用法も含め検討していく。

同館は、合併前の旧山方町が1986年、「山方自然生態観察施設」としてオープン。約50種400匹の魚類や両生類を飼育し、施設の規模から「日本一小さな水族館」として親しまれた。