絆に支えられ10年 下妻・酒店考案の地酒「嶺湖」

茨城新聞
2016年12月1日

地元産の酒米を使った日本酒で地域活性化を図ろうと、下妻市内の酒店が考案した純米酒「嶺湖(れいこ)」が誕生して今年で10年目を迎えた。地元の農家が酒米を栽培し、ラベルや印刷も全て市内業者が協力。蔵元の来福酒造(筑西市明野町)では間もなく新酒が出来上がる。酒店を経営する夫妻は「地酒の良さと人の絆に支えられて、ここまでこられた」と周囲に感謝している。

「嶺湖」を考案したのは同市下妻乙の西町商店街で「徳田酒店」を経営する徳田洋二さん(63)、絹子さん(61)夫妻。酒店は明治20年代に創業した市内でも屈指の老舗。近年は酒類販売免許の自由化などを受け、量販店の出店が相次ぎ、「町の酒屋さん」も苦境に追い込まれていた。

そんな中で考えついたのが地産地消による地酒造り。利き酒に15年間取り組んだ経験を持つ絹子さんは「美山錦」という酒米に注目した。「香りがよく、お米の味が生きる純米酒にぴったりで、下妻を表現する地酒になると思った」と絹子さん。

周囲に働き掛けたところ、同市堀篭の農家が酒米を栽培してくれることになり、ラベルや銘柄の考案、印刷なども市内の協力者が見つかった。来福酒造が酒造りを引き受け、2007年に待望の酒が出来上がった。嶺湖の嶺は筑波山、湖は砂沼の湖畔を意味する。販売元は徳田酒店だ。

当初は「なぜ酒店が地酒を造るのか」といった声もあったが、徳田夫妻の地道な努力の積み重ねによって嶺湖ファンが徐々に増えていった。「販路がなくて、最初は果たして売れるのかという不安でいっぱいでした。周囲の支えがなければここまで続かなかったのでは」と2人は言う。

「初めて嶺湖ができた時の感動は忘れません」と話す絹子さん。10周年を記念して、近くのバー「ロングホーン」で18日、オカリナ記念コンサートを開くほか、嶺湖の新酒のたる酒量り売りや嶺湖仕込みの梅酒の発売などを行う。問い合わせは徳田酒店(電)0296(44)2229へ。 

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