生誕120年、粛粲寶の作品世界紹介 茨城・坂東郷土館

茨城新聞
2022年11月5日

■日本画など200点 弟子・中山さんとの合作も

花鳥風月、人物画などで独特の画風を確立し、人気画家として活躍した粛粲寶(しゅくさんぽう)(本名水島太一郎、1902~1994年)の生誕120周年を記念した企画展が、坂東郷土館ミューズ(茨城県坂東市山)で開かれている。唯一の弟子として知られる同県境町の中山正男さん(82)の所蔵作品など約200点を展示。おおらかで温かみのある作品世界が展開されている。

粛粲寶は新潟市生まれ。洋画を黒田清輝に、日本画を小林古径に学んでいる。全国各地で個展を開催し、多くの愛好家を得ながらも、終生どの美術団体にも属さなかった。

同館での企画展の開催は3回目。晩年、東京から境町に家族で転居してきた粛粲寶を、中山さんは最期まで支えた。今回は中山さんの所蔵作品を中心に陳列した。

「長女誕生」と題した最初期の日本画や、人気画家となってから好んで描いた動植物や「竹林七童」などの童子、仏画などが並ぶ。舞台のパンフレットや包装紙などのデザインも引き受け、会場には広告や雑誌などの印刷物、機知に富んだ人柄がしのばれる手紙など貴重な資料も展示した。

粛粲寶が仏画を担当し、中山さんが般若心経を篆刻(てんこく)で表現した「阿弥陀(あみだ)三尊図」など、弟子と2人で描いた合作も目を引く。中山さんは「どの作品、資料も先生との思い出がよみがえる。今も作品の収集に努め、初公開のものを多く並べた。独特の魅力を楽しんでほしい」と話している。

入場無料。午前10時から午後6時半(土日曜、祝日は午後5時まで)。月曜と祝日の翌日は休館。会期は12月25日まで。会期中、一部作品の展示替えがある。